
サービス産業の生産性向上戦略をテーマにしたシンポジウム
日本生産性本部主催の生産性シンポジウムが3月30日、東京都内で開かれた。「サービス産業の生産性向上戦略を考える」と題したパネルディスカッションに、日本旅館協会会長を務める湯元舘会長の針谷了氏、著書「新・観光立国論」で知られる小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏らが登壇。生産性向上に対する経営者の意識改革、人口減少に対応した産業、事業の再構築などが提言された。
日本生産性本部の茂木友三郎会長(キッコーマン名誉会長)は「日本のサービス産業の生産性は、米国の5割程度の水準。言い換えれば、改善の余地が非常に大きい。個々の企業の業務効率の向上はもとより、『おもてなし』のような日本の品質の高いサービスを価格に反映し、付加価値を高めれば、生産性向上につながる可能性は高い」とあいさつした。
サービス産業の生産性向上をテーマにしたパネルディスカッションには針谷氏、アトキンソン氏のほか、外食事業やホテル事業を展開するロイヤルホールディングス会長兼CEOの菊地唯夫氏、全国労働組合生産性会議副議長の八野正一氏が登壇。進行役は、産業戦略研究所代表の村上輝康氏が務めた。
針谷氏は、中小企業、旅館業の生産性向上について提言。「経営者の不作為が最大の敵。勘と経験に基づいた経営から客観性を重視した経営に変える必要がある」と指摘した上で、IT化や機械化、従業員のカイゼン活動が不可欠と訴えた。一方で「生産性向上の伸びしろは大きく、インバウンド需要の拡大は、旅館業の付加価値を向上させるチャンス」と述べた。
アトキンソン氏は、日本の生産性の問題点として、(1)高品質・低価格戦略(2)過当競争(3)賃金の低さ(4)女性の活躍機会の不足―を挙げた。「かつての日本経済の優位性は、戦後の人口増加、内需の大きさに支えられていただけ。労働者の質は国際的な比較でも評価が高いが、賃金は低い。経営者の質に大きな問題がある」と述べた。また、女性の経済活動への参加の少なさや収入の低さも問題視した。
シンポジウムには、世耕弘成経済産業相が駆け付け、政府が生産性向上を重要視していることを強調。世耕経産相は「サービス産業の生産性向上の鍵の一つはITの導入だ。中小サービス事業者のIT化推進のため、補正予算で組んだ500億円の補助金で約13万社を支援する。さらに6省庁や業界団体で発足させた『中小サービス等生産性戦略プラットフォーム』を通じて100万社規模で生産性向上を推進する」と述べた。
シンポジウムでは、サービス産業の生産性向上の他にも、「個人の学び直しや人材流動化・企業の新陳代謝による生産性向上」をテーマとしたパネルディスカッションも行われた。