
約600人の被災者を受け入れることを決めた群馬県の四万温泉
東日本大震災の復旧・復興に向け、自衛隊や警察官、ボランティアなどによる懸命な努力が続けられている。警察庁のまとめによると、発生から12日を迎えた22日現在、死者・行方不明者は計2万2641人となり、避難者数は16都県で約26万4千人に上っている。そうした中、被災者らを受け入れる自治体、観光関係団体、旅館・ホテルなどが増えている。宿泊キャンセルが相次ぎ「自館の存続も危うい」(群馬県の旅館女将)状況にもかかわらず、「少しでもくつろいでもらえれば」と立ち上がった。善意の輪が広がっている。
新潟県災害対策本部によると、県旅館生活衛生同業組合と日本ホテル協会信越支部などは、被災者が県内での宿泊を希望する場合、特別料金で泊まれるよう加盟施設に要請した。22日現在、427施設が名乗りを上げている。
うち、旅組加盟は403軒。1泊3食を基本に料金はA(8001〜9千円)、B(6001〜8千円)、C(5001〜6千円)、D(5千円以下)などのランクを設定。Cがもっとも多く、132軒が採用。ホテル協会の施設ではホテルオークラ新潟、新潟グランドホテルなど7軒となっている。
「受け入れ可能な施設名は県内に開設している避難所、相談所に掲出している。(軒数は)順次増加する見込み」と対策本部は話している。
長野県は21日、被災者を受け入れる際の方針を決めた。宿泊施設に対しては通常料金よりも低額で受け入れてもらうよう協力を求め、22日現在、712軒が応じている。
また、県は宿泊施設を借り上げて、避難所とする。借り上げる場合は(1)1施設または地域で約30人以上の受け入れ規模がある(2)2カ月程度の受け入れが可能──などを条件とし、1人に付き1日素泊まりで3千円、1泊3食で5千円を県が負担する。
東日本から遠く離れた自治体も被災者の受け入れを始めている。長崎県は22日、第1次分として長崎市や雲仙市内の宿泊施設約40施設で被災者538世帯・約1700人を28日から受け入れると発表した。
このうち、民間宿泊施設についてはハウステンボスが190世帯分、長崎市内で45世帯分、雲仙温泉で66世帯分となっている。「プライバシーが保たれ、十分な休養がとれるよう世帯単位に個室を確保する」と市町振興課。被災地から県内の受け入れ先までの移動手段についても提供するとしている。
群馬県の四万温泉。中之条町と協力し、22日から約30軒の宿泊施設が被災者の受け入れを開始した。「物的、人的被害は全くない。何かお手伝いできることはないかと検討した結果、避難場所として宿泊施設を利用いただくことにした」と四万温泉協会。受け入れ期間は宿泊施設によって異なる。
町が窓口となり、被災地の自治体から申し込みがあった場合に受け付ける。1日当たり最大600人の受け入れが可能。また、任意団体「中之条町被災者を助ける会」を立ち上げ、群馬銀行に口座を開設した。ここに振り込まれた募金を受け入れ費用に充てる。「足りない分は町で負担し、施設の持ち出しがないようにしたい」(同協会)。
予算1億円を投入し、町内の宿泊施設で無償で被災者を受け入れることを決めたのは同県みなかみ町。最大1千人まで受け入れる予定。
町の決定を受け、観光協会は協力してくれる宿泊施設の募集を始めた。受け入れ期間は最長30日を想定。9千万円を宿泊・食費に充て、残りの1千万円は「被災者の送迎や受け入れ中の生活用具購入などに充てる」と町観光商工課。すでに福島県いわき市から約500人を受け入れる準備を始めているという。また、岩手県内の市町村からも打診が来ている模様だ。

約600人の被災者を受け入れることを決めた群馬県の四万温泉