中国各地から「デジタルノマド」が集う雲南・安寧 


 午前9時、穏やかな陽ざしに目を覚ました譚鑫さんは、ボランティアのため黄色い外壁の半山カフェへ向かう。合間には、グラフィティの道を散策し、千年の歴史を持つ曹渓寺で精進料理を味わい、「天下一の湯」と呼ばれる源泉を飲み、温泉に浸かる――これが、雲南省安寧市での譚さんの毎日だ。

雲南・竜山に集うデジタルノマドたち

滞在してわずか半月のあいだに、譚さんはオンラインで3件のオーダーメイド海外旅行プランを手がけた。

 2013年、福建省アモイ市の旅行会社で働いていた譚鑫さんは、仕事を辞めて雲南省を旅した。そして2025年の春節(旧正月、1月29日)期間中、ソーシャルコマースプラットフォーム「小紅書(RED)」で美しい竜山の写真に出会い、一目で心を奪われた。こうして彼女は、安寧市にある「BCC美麗(竜山)デジタルノマドセンター」で、ノマドライフを始めることを決意したという。

 「デジタルノマド」とは、インターネット環境があれば場所を選ばずに働けるスキルを持ち、各地を移動しながら仕事を続けるライフスタイルを指す。フリーランスのIT技術者やクリエイター、リモートワーカーなどが多く、近年、地方創生や観光業との相性の良さから注目を集めている。

 このセンターは、雲南省昆明市の管轄にある安寧市・温泉街道竜山村小組に位置し、2023年6月にオープン。以来、パキスタン、ロシア、米国をはじめとする10カ国や中国各地から約100人がここでデジタルノマドとして暮らしている。

 2023年初め、温泉の視察で安寧市を訪れた李蓉さんは、竜山村小組の雄大な自然や素朴な人々の暮らしに心を打たれた。彼女は、山の中腹にあるこの小さな村で、数人の共同起業者とともに「BCC美麗(竜山有酸素)」計画プロジェクトを立ち上げることを決意した。

BCC美麗(竜山有酸素)計画のプロジェクトの鳥瞰図

デジタルノマドがもたらす地域活性化の新しいかたち

 竜山村小組の人気が高まるにつれ、現地の村民にも新たな収入機会が生まれている。観光客の増加に伴い、農家の暮らしを体験できる民宿「農家楽(のうからく)」の利用者も次第に増えていった。

 もともと自給自足の農業を営んでいた村民たちは、デジタルノマドセンターや半山カフェの清掃作業、観光客向けの特産農産品の販売などを通じて、月あたり2000~3000元(約4万1000~6万1500円)の収入を得られるようになっている。

 観光から滞在型へ──。のんびり過ごす旅から、地域と深く関わる体験型の滞在へと、訪れるデジタルノマドのスタイルは変化しており、彼らが村民と同じコミュニティ内で活動することで、思いがけない「化学反応」が生まれている。

 第一陣としてセンターに入居した、武漢牛拉松科技有限公司の創業者・李伝義さんは、村民が販売していたクルミの売れ行きが芳しくないことを知り、自身のSNSや公式アカウントを活用してPR。あるライブ配信では、クルミ500キロを売り切ることに成功したという。

BCC美麗(竜山)アートパーク展望台

雲南初のデジタルノマド人材拠点が本格始動

 2024年9月、雲南省安寧市は「BCC美麗(竜山)デジタルノマドセンター」に、同省初となる「デジタルノマド」人材拠点を設置した。この拠点は、    「政府主導・市場運営・社会参加」のモデルで運営されている。

 人材拠点では、デジタルノマドの基礎情報や専門スキル、活用可能なリソースを把握するための人材バンクを構築。適材適所の人材配置を通じて、地域プロジェクトの推進につなげている。

 また、「山で会議」「下山して実践」という2つのイベントブランドも立ち上げた。「山」では意見交換の場として、関係当局を定期的に招き、「下山」では拠点に滞在する人材が実際に現地で実践活動を行う。こうした取り組みを通じて、彼らの先進的な知見や広い視野を、農村振興や基礎行政、都市ブランディング、投資誘致などの分野に活かしていく狙いだ。

 譚さんはこう語る。「ここは設備が充実していて、とても働きやすい環境です。人材拠点ができたことで、行政のプラットフォーム資源ともつながることができるようになりました。今は、オーダーメイド旅行プランの中に安寧の隠れた名所を組み込み、一人でも多くの人にこの美しい村の魅力を伝えたいと考えています」。

安寧市竜山村のBCC美麗(竜山)デジタルノマドセンター

(記事提供:人民日報海外版日本月刊

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第38回「にっぽんの温泉100選」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 1位草津、2位道後、3位下呂

2024年度「5つ星の宿」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第38回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2024年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月13日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒