
サニー・スン氏
人口14.5億人の潜在力 日本は人気1位の旅行先
日本政府は3月1日、中国からの入国者を対象とした水際対策を緩和した。中国最大のOTA「トリップ・ドットコム・グループ」は同日、日本への旅行商品をオンラインの生配信番組で販売するイベントを実施した。
――3月1日に、主に中国人旅行客に向けてサンリオピューロランド(東京都多摩市)ライブコマースを行った。
「オンライン生配信で旅行商品を販売する『スーパー・ワールド・トリップ』を初めて東京から行った。私がホスト役となり、東京・大阪など都市部のホテルや全国の温泉旅館に宿泊できる権利(宿泊券)や、国際航空券、JR九州の鉄道パス、サンリオピューロランドの入場券、スキーリフト券など100種類以上の旅行商品を紹介した。購入者が今年の年末までの好きな時期に使えるものだ。宿泊権(券)は2万2千泊分を販売。総販売実績(GMV、流通取引金額)は2300万人民元(日本円で約4億5500万円)に達した。JR九州インバウンド担当課長の水島法子氏にもご出演いただき、日本各地の景観、文化遺産、エンターテインメント、料理体験などを紹介。日本をプレミア観光地としてプロモーションした。配信時間は5時間、閲覧数は100万回を超えた」
――ライブコマース「スーパー・ワールド・トリップ」の実施目的は。
「世界各地域の観光の復興支援を目標に掲げ、当グループ戦略の一環として各地域のパートナーと共同で実施している。中国政府は昨年の12月26日に『中国人の海外旅行を1月8日から秩序よく再開する』と発表した。実はその数カ月前から再開時期を予測して配信の準備を進めていたので、1月にバンコクで初回、香港で第2回を実施した。今回の東京開催は3回目となる。次回は3月8日にシンガポールから行う」(※本インタビューは3月2日に東京・大手町のトリップ・ドットコム・グループ日本オフィスで実施)
――中国国内からのライブ配信はコロナ禍中から始めていた。
「当グループの会長兼共同創設者であるジェームズ・リャンが、2020年3月にライブコマースシリーズ『BOSS LIVE』を自らホスト役として出演して開始。累計販売実績は約100億人民元(日本円で約1兆5017億円)に達し、視聴者数は全世界で10億人超となった。『スーパー・ワールド・トリップ』では、旅行目的地となる世界各地域から配信し、そのデスティネーションへの旅行を販売している」
――オンライン・ライブコマースは中国では一般的なのか。テレビショッピングのオンライン版のイメージか。
「ファッションや食品などの分野では既にあったが、季節によって価格変動の大きい旅行商品については当グループが開発した新しい販売手法だ。コロナ禍中で今は旅行できないが、先の予約の権利を買うことができるというものだ。オンライン・ライブコマースの購買年齢層は25~40歳。テレビショッピングの場合はさらに年齢層が高い」
――日本の温泉地、日本の旅館を中国人旅行客はどのようにとらえているか。
「日本の温泉についてはとてもよく知られていて、個人旅行で日本の温泉旅館に泊まりたいと思っている中国人は多い。中国人も特に寒い季節には国内の温浴施設によく行く。今回のライブコマースの商品の一つに温泉大浴場付きの沖縄のリゾートホテルがあり、大人気だった。旅館は出品がとても少なかったので、すぐに完売してしまった」
――グローバルOTAの中での現在のポジションは。
「2019年にブッキングドットコム、エクスペディアを抜き、世界一のOTAになったのだか、その後の数字はコロナ前の40~50%まで落ち込んだ。中国の旅行解禁時期は欧米より遅れているわけだが、人口14.5億人の潜在力は大きい。中国に次いで人口が多いインドの最大OTA『メイク・マイ・トリップ』の最大株主も当グループだ」
――日本の観光業界にメッセージを。
「予約数、検索数に関する当グループデータによれば、中国本土、シンガポール、タイなどの多くのユーザーは一番訪れたい目的地に日本を挙げている。パンデミックの影響もあり旅行者のトレンドや嗜好は変化している。常に変化に対応してターゲットを絞る戦略で、旅行先としての日本のプロモーションをさらに強化していきたい」
孫天旭(Sun Tianxu=Sunny Sun) トリップ・ドットコム・グループ副社長(VP)。中国伝播大学卒業後、テレビのニュースキャスターなど10年超のメディア業界経験を経て同グループに入社。同グループのCSR、広報、ブランドコミュニケーション、市場統合マーケティングを担当。
【聞き手・kankokeizai.com編集長 江口英一】