【VOICE】宿泊事業者が今、取り組むべきこと 角敏旅館 代表取締役 宮坂和久 氏


角敏旅館 代表取締役 宮坂和久 氏

原点回帰、情報発信が大切

 私が旅館に入って30数年、子供のころも含めて祖父母両親の経営時代を思い出しても、第2次世界大戦後、経営に大きな影響を与えた出来事は、昭和40年代後半のオイルショック(第3次まで含む)、昭和60年代初めのバブル経済の崩壊、平成の最高円高、サーズの流行、リーマンショック、東日本大震災、そして今継続中のコロナの感染症です。しかし、コロナを除き直接の影響は1年程度で元に戻っていました。今回のコロナのような3年にも及ぶような長期低迷を受けたことはありませんでした。

 ここにきて、昨年の6月には海外からの団体旅行が解禁され、10月には水際対策が緩和され個人旅行者が日本に入国できるようになりました。国によってはまだ出入国に大きな制限があったりして完全にコロナの前の状況には戻っていませんし、緩和されてすぐ元に戻るとは思っていませんでしたが、それなりの対応を考えていました。

 ところが10月以降の予約が猛烈な勢いで増えていき、その予約数は確実に予約になり当館の場合、結果として外国の方の予約を含めた12月の延べ宿泊人員は、2019年の200%以上になり、1998年以降の12月としての最高値を記録しました。スタッフの数も増やせない等、想定外が続いたまま毎日の対応だけに追われて、より良いおもてなしにするにはなどと考える間もなく過ぎてしまいました。

 長野県の湯田中エリアでスノーモンキーが目玉の地域の特性で冬場に外客が大勢訪れるためだったのかもしれません。ただ、この傾向はコロナ前と同じでスノーモンキーとスキーなどウインタースポーツを楽しみにお客さまは来ていました。ただ新しい傾向としては、スキー場のはしごをして白馬から志賀高原へ来てその後、野沢温泉や妙高高原へ行く方が多く目立ち、湯田中の地理的条件が適していたようです。今後そういう人をいかに取り込めるか、また、冬以外にいかに興味を持ってもらえるか、お客さんとの対話を図りながら情報を発信していかないといけないと感じました。

 この後、どうやってここ湯田中に来てもらえるかを考えたとき、この3カ月旅館に着いてから「弓道の体験」ができないかと聞かれることが多く、人手が足りなく対応できずに残念な思いをお客さんにさせてしまったので、いつならできるなどの情報を発信し、取りこぼしのないように原点回帰が必要と思いました。

 外客を受け入れ始めた頃に立ち返り、自分がやらなければならないことをしっかり確認することが、大きな流れの中でその流れに乗ったり、流れを大きくして自分に引き寄せられることになると思いました。

 
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