
前回に引き続き、旅館・ホテルの現場ですぐに実践できる問題解決スキルについて分かりやすく説明しよう。前例と勘に頼って安易に解決を図ろうせず、業務効率や顧客満足度、売上利益を低下させている原因を見抜き、最適な解決策を考える能力を現場スタッフに身につけさせよう。
5、時系列で考える
業績分析に欠かせないのが時系列で考える思考法である。毎月の経営会議や営業会議の場で、売り上げや経費が先月よりも増減した原因について議論することがある。そういう時に、このスキルを身につけておくと、売り上げが減ったり、経費が増えたりした原因を推測できる。手元に5年分程度の月次データを用意して分析してみよう。
まず、取り組むべきことは異常値の発見である。例えば、「水道光熱費や燃料費がどうして増えたのかよく分からない」という声を会議の場でよく聞く。こういう時に、過去の支出を費目ごと(電気、ガス、水道、重油、温泉など)に整理して使用量を記録しておけば、異常な状況かどうかすぐに判断できる。客数が増えていないのに使用量が増えている場合には、漏水などの設備トラブルを疑うべきだろう。
異常値が発見できたら増減のトレンドがあるか見抜く。例えば、「ふるさと割、ふっこう割が終わった後に、売り上げがどうなるか分からない」という問題への対処である。自館の経営努力によるものでないため、翌年以降の売り上げが保証される訳ではない。ふるさと割、ふっこう割の一時的な影響を除いた上でトレンドを見てみよう。
数年間の売り上げが増加傾向にあれば、翌年以降も増加する可能性が高い。一方で、売り上げが減少傾向にあるならば、自館の競争力低下やリピート率の低下などが起きている可能性がある。
原因を特定するには、エージェント別の口コミ評価点や予約経路別の宿泊者数の推移を5年程度見るとよい。社内のデータで原因が特定できなければ、地域の観光入込客数などの市場データを分析してみよう。
スタッフに「時系列で考える」スキルを身につけさせるには、会議資料を数字の羅列だけでなく、エクセルで作成した折れ線グラフなどを盛り込んで作成するとよい。数字を見慣れていないスタッフでも、折れ線グラフを見せれば異常値や長期トレンドについて視覚で判断する癖を身につけることができるだろう。
(山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)