
前号で、アメリカの冷凍食品「TVディナー」について書かせていただいた。レンジアップするだけで、メインからサイドディッシュにデザートまで、全部いっぺんに用意できてしまうワンプレートの冷凍食品だ。超便利だが、なぜか日本には根付かなかったらしい。国土が広大な米国では週1回の買い出しがやっとの地域もあるから、冷凍食品略して「冷食」が必需品。だが、日本ではそこまで切迫していない。かなりの頻度でスーパーマーケットやコンビニがあるし、かつてはどの町にも商店街があった。たとえ過疎地の村であっても、そこには豊かな里山や海があり、食材に恵まれている。
近年では、中食産業の充実も挙げられるだろう。日本には古くから、主菜と副菜が一つの容器に入った「お弁当」が存在し、デパ地下やスーパー、コンビニなどさまざまな所で購入できる。冷食に頼らずとも、1パッケージ1食完結型の食事が容易に手に入るのだ。
ところが、実は最近日本にも存在するのだ、あのTVディナーみたいなヤツが。まず身近なところでは、イオングループのプライベートブランド「トップバリュ」シリーズのごはんセット。サバのみそ煮と五穀ご飯、ホウレン草のあえ物と金平ごぼうが一つのトレーに盛り込まれており、価格は何と税別298円。レンチン4分未満で出来上がりという時短ぶりもスゴイ。
他にも、デミグラスソースハンバーグにケチャップ味のチキンライス、バター風味ホウレン草などのセットや、マーボーナスにチャーハンとブロッコリーの中華あんかけなど、和洋中いろいろ取りそろえてある。
冷食大手のニチレイからは、ご飯とおかずでワンプレートに20品目以上入り、それでいて平均約320キロカロリーという、ダイエット中の女性にもピッタリな商品が発売されている。
さらには管理栄養士が監修した、糖質、塩分、脂質、たんぱく質を控えたい人向けのワンプレートミールも。例えば、糖質なら平均14グラム以下、塩分は1.6グラム以下に設定されている。家庭料理でそこまでコントロールするのは難しいが、コレなら安心して食べられるだろう。筆者もダイエットに活用してみたいと思ってしまう。
他のメーカーからも、カロリー調整食や糖質制限食などのワンプレートミールが販売されていて、ネット通販で簡単に購入できる。女性の社会進出に伴い、時短がかなう冷食市場が躍進したと言われるが、今や超高齢化社会のニーズにも対応しているのだ。
それだけではない。冷食はコロナ禍の巣ごもり需要にも応えている。豪華なコース料理を冷凍で宅配するレストランも増えている。外食できない不満を解消する人も多いらしく、数万円台のフレンチや中華のコースが人気だという。たまにはぜいたくしたいと思うのが人情ってやつだ。
実は今年、日本で初めて冷凍食品が誕生してからちょうど100周年に当たる。今までどんな進化を遂げてきたのか? 続きは次号で!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。