【私の視点 観光羅針盤 286】宇宙旅行の実現可能性 北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森秀三


 日本も世界もコロナ禍の深刻化で八方ふさがり状態なので、この際に地球を離れて、宇宙に目を転じたい。実は、1961年4月12日にソ連のガガーリン飛行士が世界初の有人宇宙飛行を成功させて世界中を驚かせた。「地球は青かった」という言葉が印象的であった。

 今年4月23日に米国スペースX社の有人宇宙船「クルードラゴン」で地球を出発したJAXA(宇宙航空研究開発機構)の星出彰彦飛行士は、24日に国際宇宙ステーションに到着し、昨年11月から滞在中の野口聡一飛行士と合流した。星出飛行士は約半年滞在し、船長を務める。一方、野口飛行士はクルードラゴンで地球に帰還し、5月2日に無事にメキシコ湾に着水している。

 1960年代以降、米ソが国家主導で宇宙開発を推進してきたが、米国は2011年にスペースシャトルを退役させ、それ以来、宇宙飛行士の輸送をロシアに頼っていた。さらに中国は21世紀に入ってから国家主導で宇宙開発に全力を注いでいる。一方、米国では超富豪起業家が宇宙産業分野に参入し、宇宙の産業利用が加速した。

 電気自動車企業テスラの創業で超富豪になったイーロン・マスク氏は、02年にスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ社(スペースX)を設立し、低コストで宇宙を往復できる輸送技術を確立し、民間主導で有人宇宙船(クルードラゴン)の開発に成功している。

 同様にアマゾン社の設立者で超富豪のジェフ・ベゾス氏は、00年に航空宇宙企業ブルーオリジン社を創業し、将来の有人宇宙飛行を目的にした事業を進めている。ベゾス氏は民間資本で宇宙旅行を大幅に安くし、なおかつ信頼性を高める技術開発を推進している。

 また、ヴァージン・グループ会長の超富豪リチャード・ブランソン氏は、04年にヴァージン・ギャラクティック社を設立して、宇宙船スペースシップの開発を行い、宇宙旅行ビジネスの推進を図っている。すでに宇宙旅行の募集を行っており、世界中の富豪が予約している。この会社は19年にニューヨーク証券取引所に上場し「世界初の宇宙旅行会社の上場」で話題になった。

 日本では堀江貴文氏がファウンダーとなって、03年に設立されたインターステラテクノロジズ社が北海道大樹町で超小型衛星打ち上げ用の小型ロケットの開発を行っている。さらに、07年には名古屋でPDエアロスペース社が設立されている。

 この会社は宇宙輸送事業(宇宙機開発、宇宙旅行など)の推進を目的にしており、ANA、エイチ・アイ・エス、みずほグループ、トヨタグループなどと連携し、宇宙旅行や宇宙太陽光発電所建設など民需としての宇宙利用の拡大を目標にしている。沖縄県下地島空港を拠点にして、25年を目処に宇宙航空機の商用運航開始を目指している。

 富裕層をターゲットにした宇宙旅行ではあるが、予想以上に早いテンポで実現可能性が高まっているのは喜ばしいことである。併せて、宇宙空間の平和利用や宇宙太陽光発電施設の開発などにも期待したい。

 (北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
 
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