
(14)スキマバイト
長期的な従業員の雇用とは別の話になるが、「スキマバイト」というもの(「スポットワーク」とも呼ばれる)が、「人手の不足」を補う手段として急速に一般化し、かつ注目すべき労働力となってきたので、これに触れておく。
勤務期間が3カ月以内の「短期アルバイト」は昔からあって、中には1週間とか1日単位での勤務もあるが、スキマバイトはそれよりさらに短く、時間単位―まさに「スキマ時間」を生かして働く(雇用する)形態である。仲介するシステムとしては「タイミー」が最も有名だが、他に「シェアフル」「ショットワークス」「メルカリ ハロ」「ワクラク」「スポットバイトル」など、多数ある。
(ⅰ)アプリでマッチング
働き手(「ワーカー」と呼ばれる)は、スマホアプリを通じて仕事を探す。これが事業者の求める条件と「マッチング」され、その勤務が完了したら、雇い主はシステム提供者に「システム利用料」を支払う。利用料は、1回当たり給与の30%が相場のようだ。つまりスキマバイトの費用は、通常時給の1・3倍程度と捉えてよい。派遣ではなく直接雇用であり、賃金は雇用主からの直接払いが基本だが、ワーカーの「即金ニーズ」に応え、「不払いへの不安」を解消するため、「タイミー」などの大手では、「立て替え払い」の形で勤務終了直後に振り込まれる仕組みになっている。
(ⅱ)手続きが簡単
求人側、ワーカー側とも、非常に簡単な手続きで利用できる。履歴書も面接もなしで、その日その時間から働けるというのが、ワーカーにとっての大きな魅力である。求人側も、初めにシステム画面から、勤務条件、求人要件などの情報をテンプレートに記入しておけば、後はカレンダーから何度でも「今日来てほしい人」を手軽に求めることができる。労働通知書はシステムから自動生成され、雇用契約の締結もQRコードで完結する。超短期アルバイトなので、社保の適用、源泉徴収、給与支払い報告書といった手続きはまず不要だが、勤務頻度が高まってこれらの適用基準に達しそうな場合も、多くはシステムが自動的に制限をかけてくれる仕組みになっている。
(ⅲ)ワーカーの選別
ワーカーごとに、過去にシステムを通じて働いた勤務先での評価や業務経歴が表示されるようになっているので、信頼できそうな人、「その仕事」について経験のある人などを選ぶことが可能だ。またそういう人を「お気に入り」としてマークしておくことで、それらの人だけに求人を公開することもできる。ただそういう人には「引く手」も多いので、「早い者勝ち」となる。
(ⅳ)引き抜きOK
ワーカーは派遣ではないので、そもそも「引き抜き」という表現は適切でないが…アルバイトとして働いてもらった結果、双方が「気に入った」となれば、長期雇用、あるいは正式な社員として採用することも可能だ。このことは、実は採用における非常に大きなメリットと言える。つまり「お試し勤務」「お試し雇用」という重要な経験機会が、短時間バイトという「手軽な入り口」から作れるわけで、生半可なインターンシップよりもはるかに効果的なのである。
(リョケン代表取締役社長)
(観光経済新聞25年4月21日号掲載コラム)