全国のあらゆる高速バス路線を自由に乗降できるフリーパスがあれば、確かに、便利そうに見える。
しかし「Japan Rail Pass」が「北海道も京都も広島も」というふうに細長い国土の各地を効率的に訪れようとすれば大変有効なのであるのに対し、鉄道(特に新幹線)に比べ所要時間が長い高速バスを乗り継いで全国を旅行するのは、いかにも効率が悪い。ましてや、有効期限を設定するならば、結果として全国を回ることは無理かもしれない。
「地域内の高速バスが乗降自由になるフリー乗車券を設定したい」という希望も聞かれる。
この分野では、2005年に、九州内の高速バス(その後、路線バスや一部の航路も追加)が乗降自由となる「SUNQパス」が発売され、国内客、訪日観光客の双方に人気である。17年度は年間発売枚数が初めて10万枚を突破した。それと同じようなものを地元でも、という希望である。
だが、九州はもともと「高速バス王国」と呼ばれ、福岡をハブとした高速バス路線のほか、それ以外の都市どうしも直結する重層的な路線網が張り巡らされている。もともと人口規模がそこそこ大きい都市が近接している九州ならではの路線網だ。さらにそれらの路線の中間地点に、湯布院や阿蘇、高千穂といった観光デスティネーションも点在している。
一方で北海道や東北などでは、札幌や仙台といった中核都市をハブとした高速バス路線こそ充実しているが、それ以外の都市どうしを直結する路線は少ない。札幌や仙台発着の路線も、各地からこれらの都市に向かう地元在住者向けのダイヤ設定となっている。FITにとっては、フリー乗車券があったところでその利用価値が大きくないといえる。
やはり、まずは大都市と観光デスティネーション、またデスティネーションどうしを結ぶ観光客向けの高速バス路線を一つ一つ充実させるとともに、それらを乗り継いで旅行しやすい環境を作ることの方が大切である。
(高速バスマーケティング研究所代表)





