
1月27日に山形県天童温泉で開催された山形県旅館ホテル生活衛生同業組合青年部の総会にお招きいただき、「バリアフリー旅館最新事例とはじめの一歩」と題して、旅館の取り組み、そろえたい備品や情報発信について語ってきました。
コロナ禍での会合ですので、オンライン参加者も多数。会場の天童温泉あづま荘の宴会場には、カメラが設置され、ケーブルが床をはっていました。青年部長であり、小野川温泉登府屋社長の遠藤直人さんが投影されたスライドと壇上の様子を織り交ぜながら配信して下さいました。遠藤社長はアイデアを豊富にお持ちで、的確に時代を捉えた経営をされています。最近では、ご自身の宿でリモートワークのお客さんのために、ユーチューバーにも利用しやすい「配信部屋」を作りました。ですから、この日の配信機材は全て遠藤社長ご自身が所有するもの。さながら、テレビの撮影隊の技術さんのような動きをされていました。こうして天童温泉とのご縁をいただきましたので、元気のいい天童の様子をご紹介します。
天童といえば、全旅連青年部長を務めた山口敦史さんがいます。今は旅館経営だけでなく、「地元に根っこを張って、この地から物事を変えていく努力をしたい」というお考えを持ち、天童温泉の旅館6軒のオーナーさんと共に株式会社DMC天童温泉を立ち上げ、着地型旅行商品の開発をされています。天童発の銀山温泉ツアーが人気だそうです。
そして天童は将棋の駒の生産が日本一で有名な将棋の街です。山口さんが社長を務められる「ほほえみの宿 滝の湯」には竜王戦の対局のために作られた「竜王の間」があります。数寄屋造りで、対局のコンディションを整えるさまざまな工夫がしてあります。
例えば、棋士が集中しやすく、人の出入りで驚かせないようにと、障子に人影を浮かばせる配慮。カメラを設置した位置から畳のヘリが映らないようにと、1・5倍の大きさの畳を特注。電気のコードや中継用の回線など、目障りなものは極力目に入らないように押し入れに隠す等です。
山口社長は棋士の方々とも交流があります。現竜王の豊島将之さんをかつて米沢や蔵王に案内したそうです。こうした棋士との交流を聞くと、滝の湯に棋士がたたずむ姿が浮かびますし、文化が息づく宿は重みがありますね。
心に残ったもう一つの出会いは天童温泉あづま荘の「猫女将・まいちゃん」です。くりくりお目めで白い胸がふわふわの日本キジシロ。ごろごろと喉を鳴らしてくれます。猫に慣れてない私にも人見知りせず、おとなしいまいちゃんは抱かせてくれました。
まいちゃんがお客さんの前に姿を現すときは、お気に入りの箱に入っているのが常。その箱のコレクションがあるとか。時にははんてんを着用、クリスマスにはサンタに変身し、お客さんを魅了します。
あづま荘にまいちゃんがやって来たのは、2010年。若旦那の高橋和也さんに拾われ、その後、女将と暮らすようになりました。東日本大震災以降のあづま荘のピンチを救ったのがまいちゃんでした。女将がブログにまいちゃんの記事を投稿するとPVが上がり、その評判を見て、2013年に猫女将としてデビュー。瞬く間に人気を博し、2018年には楽天トラベル看板猫ランキング1位。全国放送にも出演し、宿の知名度を上げた功労猫です。
昨年のGo To効果で、連日満館が続いたときには、まいちゃんの面会予約はびっしり。さらに、猫好きがスタッフに応募してくるそうで、人材確保にまで貢献!
コロナ禍で息苦しさを感じる毎日ですので、ほっこりする話題をお届けしました。
(温泉エッセイスト)