【山崎まゆみの「ちょっと よろしいですか」49】地方よ、自信を持て。誇れ 温泉エッセイスト 山崎まゆみ


 コーディネーターを務める「アフターコロナ・ウィズコロナ時代の観光」対談も3回目となりました。今回は徹底してコロナ問題を特集して話題になっている「羽鳥慎一モーニングショー」木曜日コメンテーターの高木美保さんをお迎えしました。

 的確で鋭いコメントに定評がある高木さんですが、女優としての代表作は、東海テレビの「華の嵐」などの「嵐シリーズ」でしょうか。日本のスカーレットオハラとみまがうばかりの気高い女性を演じられた姿がいまも脳裏に焼き付いています。

 高木さんとの出会いは2009年、高木さんがパーソナリティーをつとめる文化放送「高木美保 close to you」に月1回でレギュラー出演させていただいたことでした。それ以来、時々ランチをしながら近況を報告して、私が岐路に立った時にはいつもアドバイスをいただいてきました。対談でも話されていたように、東京出身の高木さんが地方で暮らすことをご自身で選びました。今でこそ珍しくはありませんが、高木さんが移住したのは90年代後半。地方暮らしに光を当てた先駆者のような存在でした。移住先の那須高原では農業に従事します。「女優さんが、なぜ地方で土をいじるのか?」というのは、私だけでなくごく一般的な疑問でした。実際、そうしたテーマの講演があったそうです。対談で「聴衆者が泣いてしまうの」と話されたことが心に残りました。

 高木さんの話に通底しているのは「地方で暮らす人の意識改革。自信を持つこと。暮らしている土地に誇りを持つこと」でした。

 私はふるさと新潟を思い浮かべていました。

 新潟県はGo Toトラベルがスタートする前から、県独自のキャンペーンを実施し、徐々にお客さんが戻ってきていると聞いています。

 コロナ禍のいまこそ、地元の人に来てもらうという「近場観光」「マイクロツーリズム」という言葉も定着しつつありますが、そもそも新潟県民は県内で旅をする傾向が強いので気質にあった政策です。加えて、土地の魅力を地元の人に理解してもらう、発見してもらうことがいまの観光業界の主流ですが、そのようなことは越後湯沢温泉「旅籠井仙」の井口智裕さんが代表を務める「雪国観光圏」が10年以上もかけてやり続けてきたこと。

 先見の明があった「雪国観光圏」の取り組みに、いまようやく世の中が追い付いてきました。これからもっと脚光を浴びるでしょう。だからこそ「雪国観光圏」がやってきたことの価値を新潟県内の人にも評価してほしい。その価値を地元の人が理解することで、田舎が強くなるはず。そういった点では、地元メディアの力も借りたいものです。新潟で言えば、地方出版社であるニューズ・ラインから刊行している女性誌「Komachi」に力があります。そうした新聞などの報道媒体以外のごく一般的な雑誌で評価してもらうことも策です。

 また新潟の人は「ミシュランガイド新潟版」を片手に県内を旅しているようです。ただこの「ミシュランガイド新潟版」の刊行は、新潟県が力を入れて実現したこと。このような県民が自信を持てる、外からの評価を得る機会がこれからも必要です。
 わが愛するふるさと。

 このコロナ禍で実家にすら帰れておらず、日々、望郷の念を抱きながら、高木さんの提言に触発されて、いまこそ地方が力を付けるチャンスかもしれないと、そんなことを考えています。コロナ禍の中で地方の旅館経営者に向けて行ったオンラインインタビューの中で、ある旅館オーナーの「都会にマウンティングされない田舎になる」という言葉が私は忘れられません。

(温泉エッセイスト)

 
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