【地方再生・創生論 308】少子化対策をあらゆる面から 松浪健四郎


 岸田首相もついに重い腰を上げた。さすがに2022年の出生者数が80万人を割ったと知れば手を打たねばならなくなる。年間約150万人が死亡する日本にあって、毎年60万人、70万人の人口減少が現実のものとなると、国家や社会が先細りするばかりで発展が期待されない。

「異次元の少子化対策」を首相は具体化させるという。また、小池百合子都知事も新年度の方針として、金銭の支給を子どもたちに行うと発表した。少子化が社会の活動を奪うばかりか、将来の国家を暗くする。

 毎年、15万人の命が親の都合によって失われている。「赤ちゃんポスト」が存在しても一般的でなく、親たちは産む選択をせずに堕胎策をとる。人工妊娠中絶が認められる日本にあって、「子育て」を保証する政府、自治体があれば産んでくれる夫婦が増えるかもしれない。少子化を放置してきた政府は、ついに東京都と競うように対策を本格化させる。

 岸田首相は年頭の伊勢参りの後の記者会見で、「出生率を反転させなければならない」と語った。読売新聞は、強い危機感を示したと書く。まず、児童手当などの経済的支援の強化を行うという。そして、学童保育や病児保育、産後ケアなどの支援を拡充させる。また、働き方改革の推進等を3本柱に掲げる。

 何もしない政策よりもましだが、上記の3本柱では十分とはいえない。結婚をしない若者が増加しているゆえ、この人たちに「結婚のすすめ」を説く必要がある。結婚奨励金や住宅あっせん制度等も求められるだろうし、結婚相談所も大切だ。「子づくり」の前の政策がないと少子化対策は進まない。プライバシーを侵害することなく、公的機関も結婚奨励のための策を考慮すべきであろう。かつて東北地方の農家の男性が、花嫁を外国人に求めたことがあった。一時のブームで終わってしまったようだが、小回りのきく自治体はさまざまなアイデアを出してほしい。政府の政策は、「異次元」とはいえ、「子づくり」に役立つか疑問だ。

 小池百合子東京都知事は、新年度方針として、「所得制限なしで0歳から18歳までに月5千円を給付する」と打ち出した。1人当たりの給付だから各家庭への大きな支援となろうか。東京都内の生活費は、他県に比して高くつくための補助にも映るが、知事の認識はもっと深刻のようだ。合計特殊出産率(1人の女性が生涯に産む子どもの人数)が、東京都が全国平均を大きく下回ったのだ。2021年の東京都は1.08だったが、全国平均は1.3人であった。この数字差に小池都知事は危機感をもったと想像する。

 1カ月5千円の給付額は、全国平均の教育費が7千円に対し東京都が1万2千円、その差額だと都が説明する。家計支援は大きく、年間費用は1200億円だという。都だからといって余裕があるわけではないが、総予算の1.5%を占めるこの給付金は、いかに少子化対策が大切かを物語る。また小池都知事の目玉政策の第1でもあるようだ。

 イスラム教社会では、一般的には一夫多妻。1980年に国連で反対決議があったが、その習慣に変化はないようだ。ネパールの地域によっては、その逆もある。人間社会は宗教に支配されがちだが、一夫多妻制は容認されなくなっている。中国では一人っ子政策が中止されたが、子どもが増えない傾向にあるという。

 年間200万人も誕生した日本人、昨年は初めて80万人を割った。このままでは、人口は明治時代の頃と同数になる心配がある。社会制度が破綻してしまうばかりか、経済が持たなくなる。政府は労働力だけではなく、移民策も考えるべきである。優秀な労働力とともに途上国からの留学生受け入れも考慮せねばならない。人口増加策は、「子づくり」だけではなく、あらゆる面から手を打つ必要がある。

 少子化問題は、同時に移民国家への移行も考えねばならない問題でもある。単一民族国家の幻想は捨てねばならない年になる感じがする。また各自治体も東京都に続くべし。

 
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