【地域創生と観光ビジネス73】能登復興に向けて再び「加賀屋レプラカン歌劇団」アンコール公演へ 淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子


 アトレ竹芝の劇場型コミュニティスペース「SHAKOBA」で開催の「加賀屋レプラカン歌劇団」アンコール公演を鑑賞した。昨年11月の初回公演に続く今回のアンコール公演は、春の彼岸をはさんだ3日間限定の開催だった。舞台から観衆までの距離が近くて、迫力あるレビューショーが堪能できる。アサヒスーパードライの生ジョッキ缶を片手に、リラックスムードでショーに興じた。

 きらびやかな衣装はもちろんのこと、歌と踊りのパフォーマンスは初回以上に磨きがかかっている。ちなみにレプラカンとは、”捕まえると、宝のありかを教えてくれる妖精”を意味するのだそう。これまで和倉温泉で多くのひとをとりこにしてきたことだろう。

 初回公演では、舞台後の挨拶に能登半島地震の発災時の様子が語られたが、リピーターが多かったせいか、今回は違うトークも。豪華な和装姿で登場したかとおもえば、いつの間にかスレンダーなドレスに。フレンチカンカンにサーキュラースカートなどなど、衣装の早替えも観ていて楽しい。

 男役の夏輝レオンさんと、はんなりした雰囲気のゆふきれいさんの2人の呼吸が、ぴったり合っているのも見どころだ。同歌劇団のダンサーたちは、全て女性で構成されている。

 アフターコロナの起爆剤にと加賀屋では、館内劇場のレビューショーを同歌劇団に託した。だが、それも束の間。24年元日に発生した大地震で甚大な被害を受けたのはご存じの通りだ。当然ながら彼女たちも、歌や踊りを披露する機会を失ったのである。

 能登の復興を支援しようと加賀屋とJTB、アサヒビールが手をたずさえて、本公演を東京で企画した。被災地へ赴くことができない首都圏在住者にとっては、ありがたい企画である。会場の片隅には、加賀屋特製の能登ぽんずや御さしみしょうゆ、ほたるいかなどの珍味や菓子類が販売され、筆者も応援消費のつもりで紙袋いっぱいに買い求めた。

 26年冬をめどに敷地内に新旅館「加賀屋」を建設し、グループの「あえの風」や「虹と海」、「松乃碧」も同年中に営業再開すると報じられた。これからも途切れずに応援していきたい。

 今からちょうど30年前のこと。大手文具メーカーの特約店招待旅行の添乗で加賀屋に宿泊した。それが翌朝、「集合時間になっても添乗員が来ない」と騒ぎになった。寝坊したのである。サブ添もいない。フロントからの電話で叩き起こされた筆者は、慌てて身支度した。貸し切りバスに飛び乗って平身低頭、お詫びしながら点呼して、宿をあとにしたのである。

 ところが、参加者の皆さんに車内で配るはずの輪島塗の箸を、フロントで引き取るのを忘れたことに気づいた。携帯電話もない時代。バス備え付けの無線電話で連絡をとり、加賀屋の社員が社用車で、私たちが乗るバスを追いかけてくれることになった。次の休憩場所で無事、人数分の箸をキャッチして、ことなきを得た。

 加賀屋の方々には、感謝してもしきれないご恩があるのだ。

 なお、その様子をみていた文具メーカーの役員は「仕方がないな」と苦笑するばかりで、以後、おとがめなしで済んだ。今なら始末書ものだろう。たくさんの失敗を許してもらって今の自分がある。

(淑徳大学 学長特別補佐・経営学部学部長・教授 千葉千枝子)


(観光経済新聞2025年4月7日号掲載コラム)

 
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