
「人材不足」の悩み深刻化
観光経済新聞社は、日本旅館協会の会員などに経営状況や課題を聞くアンケート調査を2018年も実施し、このほど結果をまとめた。18年の業績見込みを聞くと、前年よりも「大きく伸びる」の回答は2.7%、「やや伸びる」の回答は30.4%。「伸びる」全体の回答は33.1%となり、17年の41.8%から8.7ポイント減少した。経営の課題は「人手不足」をはじめ「人材確保」「人材育成」など人に関することが今回も圧倒的に多く、人材不足が深刻化している。
業績「伸びる」が減少
業績は、前年に比べ「大きく伸びる」「やや伸びる」「横ばい」「やや落ち込む」「大きく落ち込む」からの選択式で聞いた。18年の業績が「大きく伸びる」2・7%は前年よりも2・5ポイント、「やや伸びる」30・4%は6・2ポイント、それぞれ減少した。「大きく落ち込む」は3・4%と1・2ポイント減少したものの、「やや落ち込む」は25・0%と6・7ポイント増加。「落ち込む」全体でも28・4%と5・5ポイント増えた。
19年の業績見込みも聞いており、「大きく伸びる」は18年比1・3ポイント減の1・4%、「やや伸びる」は5・4ポイント増の35・8%で、「伸びる」全体では4・1ポイント増の37・2%。「落ち込む」全体も16・3%と12・1ポイント減しており、19年には業績が回復すると予測される。
宿泊単価の今後の見通しは「やや上昇」とする回答が49・7%と半数を占める。続く「横ばい」も41・7%と多い。
経営の課題は自由記入形式で聞いた。ダントツの人材問題に続くのは、「売り上げアップ」や「集客、誘客」など売り上げに関する悩み。「働き方改革への取り組み」や「業務改善」「生産性向上」「耐震工事」の回答も多い。
旅行会社、OTAとも「手数料が高い」
客室を販売するチャネルについての質問では、旅行会社、OTA、自販の割合を答えてもらった。
旅行会社経由は「21~30%」が21・1%で最も多く、18・4%の「11~20%」が続く。前回は「31~40%」と「41~50%」が共に20・5%と多かったことから、旅行会社経由の販売が縮小している。
OTA経由は「21~30%」が31・0%と最も多かった。前回は「11~20%」が32・8%と最多で、OTAの販売が拡大している。旅行会社からOTAへシフトしている状況が依然、継続している。
直販は前回と同様、「11~20%」が最多。率は25・4%から23・0%に減少した。
旅行会社の手数料率は、大手の多くが基本線とする「15%」が55・6%と今回も群を抜いて多かった。その手数料が「高い」という回答は72・8%を占め、27・2%の「適正」を大きく上回った。
OTAの手数料率は「10%」が46・4%と最多。その手数料は「高い」が66・3%と大多数だ。
前回に続いて、宿泊人員に占める外国人客の割合を聞いた。最も多いのが50・4%の「5%未満」で、22・2%の「5~10%未満」が続く。この二つを合わせた10%未満が7割強を占めるもののその割合は減り、10%以上の割合が増えていることから、外国人客の受け入れは増加している。
今回は地震や台風などの災害(火事を含む)の備えについても質問した。備えを「している」は73・9%と大多数。しかし、地域的な状況もあるのだろうが、「していない」が8・1%あった。「していないがする予定」は18・0%だった。
備えの内容は「訓練」が51・4%で最多。「マニュアル作成」が36・9%、「勉強会」が20・7%。
調査の概要
この調査は、往復アンケートはがきを2018年11月に郵送し、日本旅館協会の会員などの旅館・ホテルに(1)18年の業績見込み(2)19年の業績見込み(3)宿泊単価の見通し(4)経営上の課題(5)旅行会社、OTA、直販の各客室販売比率(6)旅行会社とOTAの実質的な手数料率(企画参画料金、ポイント負担・ネット広告などを含む)(7)その手数料は適正か(8)宿泊人員に占める外国人観光客の割合(9)地震や台風などの災害(火事を含む)の備え―などについて聞いた。
回答数は160軒。客室規模別では「10~30室」が24軒、「31~50室」が31軒、「51~75室」が30軒、「76~100室」が23軒、「101室以上」が52軒となっている。
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