
ホテル業界検定スタートアップ協議会が7月に厚生労働大臣指定の国家検定試験機関として指定された。宿泊産業従事者たちの長年の夢であった国家検定ホテル・マネジメント技能士資格の誕生である。
私がホテル業界に入った40年前は、経験主義的な業界であり業務や組織が十分に整備されていなかったことを覚えている。筆者が勤務したホテルでも接客サービスに失敗し先輩スタッフからひどく怒られたことで心を痛め、理由が分からず途方に暮れたことがあった。
あれから半世紀近くが過ぎ、ホテル業界もそして業界を取り囲む環境も大きく変わった。今や年間2500万人を超える外国からの訪日客を迎える時代となった。また、ホテル経営の変化により外国人の経営者や総支配人が増え、新しい環境へと変化そして発展している。
このような状況の下、ホテルスタッフに求められるものも大きく変わった。以前のサービス専門スキルに加え、新たなコミュニケーション力などの資質や能力を持ったグローバルな人材が求められている。また、従来のホテル業界はサービス力を数値に置き換えることは重要とされず、抽象的概念である「笑顔」や「やさしさ」が重要とされた。
これからのホテルスタッフは、それらに加え、人を統制し利益を確保する人材、経営のマネジメントスキルを身に付けることが必要である。
これからの観光立国の日本において、ホテルスタッフはスペシャリストとして注目される職業であり、ホテルスタッフ自身が多様な知識や技術を持ち、自身のキャリアマップを描きながらホテル業のプロ人材として世界を舞台に活躍する時代である。
今回のホテル・マネジメント技能士資格の誕生は、観光業界の中でも大きく評価されるべきものであり、観光立国日本の発展の一端を担うものである。
私も微力ながら多くのプロホテルスタッフとともに、世界を代表できる観光立国としての日本の地位向上への確立に貢献したいと考えている。
(NPO・シニアマイスターネットワーク九州支部代表 中村国際ホテル専門学校准教授、牧一郎)