【ちょっとよろしいですか 143】観光地・温泉地の魅力を物語で伝える 山崎まゆみ


 観光庁の補助事業における有識者の伴走支援や個々の事業者からのご依頼で、各地に呼んでいただいています。年内は山梨県早川町、北海道美瑛町・上富良野町、群馬県水上町、兵庫県城崎温泉、長野県野沢温泉、北海道中標津などを訪問します。

 既に訪ねた地域で言えば、地域の皆さんが一体となり、同じコンセプト・ビジョンに向けて汗を流されていました。人材不足という地域課題を抱えていながらも、非常に労力を割いておられ、頭が下がります。

 皆さんの真剣な様子を拝見するたびに、繰り返しお話しさせていただくのは、「誰のためのコンテンツなのか、地域の何を伝える・表現するためのコンテンツなのかを明確にしていますか、意識されていますか」ということです。これが案外、ぼんやりしていることが多いのです。

 どんなに素晴らしいコンテンツを作っても、利用してもらわなければ苦労が水の泡。利用してもらうためには完成したコンテンツの周知が必要です。そのためにはマスコミの力も借りなければ、広く周知は難しい。「誰に、何を伝えるためのコンテンツなのか」をはっきりさせること。そこをブレず、周知も常に意識すれば、集客がかないます。

 地域のコンセプト・ビジョンの合意形成ができていても、利用してもらうための「伝える術」まで考えられている地域は、少ないのではないでしょうか。私は地域づくりのお手伝いと同時にマスメディアで伝えることも生業(なりわい)としています。今回は伝える立場からお話しさせていただきますね。

 6月に出版した『宿帳が語る昭和100年 温泉で素顔を見せたあの人』は、昭和を代表するスターたちの温泉宿での滞在秘話をつづった全24編のエピソード集です。大変ありがたいことに、計30以上の媒体に、著者インタビューや書評、本からの抜粋記事などで紹介していただきましたことで、順調に増刷を重ね、ロングテールを目指しています。また来年の昭和100年を見据え、今年の秋の温泉シーズンも、版元は力を入れて継続的に販促してくれます。

 そして取材を受けるたびに必ず言われたことが、「行ってみたい」の一言でした。書評の中でも象徴的だったのが、8月24日に毎日新聞書評面に掲載された記事ですので、抜粋して転載します。

 ―東北から関東、信越、東海に北陸、近畿、九州など各地の名湯が舞台だ。著名人が訪れた宿の関係者に取材し、それぞれの人となりを描いた。(中略)他には松田優作や西城秀樹、樹木希林、岡本太郎、ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、北大路魯山人に田中角栄、松本清張ら。映画やテレビの画面、著作などからは伝わってこない素顔をうかがう上でファンにはありがたい。各宿の様子とかいわいの人々の情、各地の歴史と風土も伝わってくる。温泉地の斬新なガイドブックとしても頼りになる(栗)―。

 「斬新なガイドブック」と評していただいたことは本望です。 

 情報とは、点だけで表記しても魅力は伝わりません。点を線に、線を面にして、一つの物語とすることで、初めて「行ってみたい」と思ってもらえるのです。点だけの情報では表面的すぎて、訪ねてもらったとしても通過点にしかならず、その土地を知り、応援してくださるまでの関係性に育ちません。

 現在、コンテンツ作りをされている地域の皆さん、いかに発信し、お客さんにどう届けるか、その術も考慮してください。

(温泉エッセイスト)

 
 
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