
「温泉百名山」著者の飯出敏夫氏が記念講演
北八ヶ岳苔の会を表彰
旅行ライターなどを会員とする日本旅のペンクラブ(中尾隆之代表会員)の第36回「旅の日」の会、創立60周年記念祝賀会が16日、東京都千代田区の学士会館で開かれた。クラブの理事で2022年10月刊行の著書「温泉百名山」が好評の飯出敏夫氏が記念講演。旅行文化の向上に寄与した団体や個人を表彰する第43回日本旅のペンクラブ賞は、環境保全と観光振興の両立に取り組む北八ケ岳苔の会(長野県)に贈られた。
クラブは1962年6月の設立から60周年を迎えた。また、江戸時代の俳人、松尾芭蕉が「奥の細道」の旅へと出発した5月16日を「旅の日」として、賞の選定や会員が集まるイベントを開催している。
記念講演では、飯出氏が「『温泉百名山』選定登山の軌跡」と題して語った。文筆家、登山家の深田久弥の「日本百名山」にならい、名湯を持つ名山を100座選定し紹介した「温泉百名山」が話題となっている。
飯出氏は温泉取材歴40年のベテランライターで、以前から山好きだったが、69歳で白山に登ったことをきっかけに日本百名山を完登。その後、温泉百名山の選定を思い立ち、悪性リンパ腫や膝関節症と闘いながら選定のために実際に100座に登った。
飯出氏は「ゆっくりでも登り続ければ山頂に立てる。温泉百名山をやり遂げる中でそう感じた。そうした継続への思いもあり、今は、もう少しハードルの低い山と温泉で続編を出そうと取り組んでいる」と語った。
日本旅のペンクラブ賞の北八ケ岳苔の会への授与も行われた。北八ケ岳エリアには、「もののけの森」などと名付けられたコケが美しい森が広がる。周辺の山小屋、青苔荘、白駒荘、麦草ヒュッテ、高見石小屋などが2010年に同会をつくり、自然環境の保全やコケの観察会、遊歩道の整備に取り組んでいる。
北八ケ岳苔の会の島立正広副会長(麦草ヒュッテ)は「コケをテーマに地域を活性化できるとは思っていなかった。独立心の強い山小屋のおやじたちが連携してやってこれたのも、自然の専門家や研究者、愛好家の皆さんのご協力のおかげだ」と語った。