
国民的に知られるキャラクター「アンパンマン」の生みの親である、漫画家で絵本作家のやなせたかし氏。やなせ夫妻をモデルにしたテレビドラマの放映開始に合わせ、やなせ氏ゆかりの高知県ものべがわエリアでは、観光博の実施や施設リニューアルなど、観光客の受け入れに向けてさまざまな取り組みが始まった。
3月31日に放送が始まったNHKの2025年度前期の連続テレビ小説「あんぱん」。主人公は、やなせたかし夫人の暢氏がモデル。やなせ氏は高知県香北町(現・香美市)出身で、同じものべがわエリアの南国市、香南市にもゆかりが深い。
これに合わせて物部川流域の3市では、29日から1年間にわたる観光キャンペーン「観光博覧会『ものべすと』」をスタートさせた。ものべすととは、「ものべ」と最上を表す「ベスト」を組み合わせた造語。さまざまな地域での体験や交流などを通して、ものべがわエリアの魅力に触れてもらおうという取り組みだ。やなせ氏の「人生は、よろこばせごっこ」を博覧会の合言葉に、来年2月28日までの会期中、同エリアならではの自然や文化、食などに触れられるイベントなどを順次開催する。
同エリアには、やなせ氏が少年時代を過ごし、ゆかりのキャラクターが配された商店街での町あるきなどが楽しめる、「ごめんまち やなせたかしロード」(南国市後免町)や、詩碑などが配されたやなせ夫妻の眠る墓地公園「やなせたかし朴ノ木公園」など、やなせ氏の足跡をたどれる場所が散在する。
このほか世界的に知られるフィギュアメーカー「海洋堂」の工場で、ジオラマづくり体験などが行える海洋堂SpaceFactory(南国市)、メロンやイチゴなど、1年中フルーツや花を楽しめる西島園芸団地(南国市)など、見どころも多い。
JR四国や土佐くろしお鉄道の車両やホームには、やなせ氏がデザインしたご当地キャラクターのイラストや立体像などが数多くあり、沿線の名物や、ふるさとを大切にしたやなせ氏の思いに触れることができる。
ものべすと開催に合わせ、JR四国などはお得な周遊きっぷ「高知ものべ周遊パス」の販売を開始した。(1)JR四国の高知―土佐山田間普通列車自由席(2)土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の後免―和食間(3)JR四国バス大栃線土佐山田―美良布間(4)とさでんバス山田駅―龍河洞間の4路線が2日間乗り降り自由になる上、周辺50施設で割引やプレゼントなどの特典を受けられる。(3)ではアンパンマンのラッピングバスにも乗車できる。販売価格は大人3500円、子ども1750円。利用期間は29日から26年3月31日まで。
やなせ作品を数多く展示する同記念館(左)と隣接するホテル(C)やなせたかし (C)やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV
「ものべすと」チラシ
やなせたかし記念館28日に改装オープン
香美市立やなせたかし記念館アンパンマンミュージアムは3月29日、リニューアルオープンした。館内だけでなく、隣接の詩とメルヘン絵本館、別館のWi―Fi環境を強化。新たに事前予約制を導入することによる電子チケットの受け取りや、館内でのデジタルスタンプラリーなどがストレスなく利用できるようにして、増加が見込まれる来館者へのスムーズな対応の実現を目指す。
同記念館はやなせ氏のキャンバス画などを中心に展示する美術館的要素を強く持つが、開館当初から子どもが楽しめる、「ファースト・ミュージアム」を想定。通常の美術館よりも入りやすく、子どもでも見やすい展示方法や内容を特長としている。
今回の改装では展示替えやWi―Fi環境の整備のほか、やなせ氏が自画像代わりに描いたキャラクター「やなせうさぎ」の像を新たにエントランスに配置したほか、同館前セレネ前広場のアンパンマン遊具の更新、エレベーターの改修なども行った。
また隣接する宿泊施設「ザ・シックスダイアリーかほくホテルアンドリゾート」もリニューアル。このうち大浴場など館内施設にアンパンマンのイラストなどを多く用いている同ホテルでは、新たにやなせ氏が描いた香美市のキャラクターをプリントしたカードキーを導入。宿泊客はレプリカを持ち帰れるようにした。