食べ残し持ち帰りで食ロス削減へ 


ルール明確にし、安全に実施

 SDGsへの取り組みが浸透しつつあるが、その中の最重要トピックの一つが「食品(フード)ロス」。食品ロス削減への取り組みを本格化させる宿泊事業者も増加している。その一つ、日本ホテル(東京都豊島区)のグループホテルは昨年4月から食べ残しの持ち帰りサービス「mottECO(モッテコ)」を展開し、環境省なども食品ロスのアクションとして推奨している。同サービスを含む食品ロスへの取り組みを、グループ施設の一つ、ホテルメトロポリタンエドモント(同千代田区)の松田秀明総支配人に聞いた。

 松田氏は導入時の懸念として、「もともと持ち帰り文化は日本にあったが、ある時期から食品衛生意識が高まり、持ち帰りができなくなった。当社として食品ロス削減に向け『持ち帰りは外せない』という意識はあったが、食品事故が起こるリスクを考えた」と振り返る。実際、クッキーやパンなどを館内店舗で販売する宿泊施設は多いが、宴会場やレストランでの提供料理の持ち帰りはハードルが高くなる。そんな中、環境省や消費者庁主導で持ち帰りを推奨しようという機運が高まった。アメリカでは持ち帰り用のドギーバッグが定着しているが、日本でも同様のものを取り入れ、浸透させたいとの考えがmottECO誕生の基点となった。

 同サービスの肝要として松田氏は、「食べきれなかった料理はお客さまの自己責任でお持ち帰りいただけます」と明確化し、それをお客さまにも理解していただいた上で持ち帰ってもらう点が最も重要」と話す。「ホテルが館内で料理を提供しているうちは温度、消費期限等をホテル側の責任で管理するが、ひとたびお客さまが料理をお持ち帰りいただくと、例えばテーブルに放置して翌朝召し上がる場合では、ホテル内と管理環境が異なる。そこで万一、食品事故が発生し、『これはホテル側の責任で…』と言われてしまうとどうしようもない。そこで、『お客さまの責任でお持ち帰りください』という点を明確にお伝えしている」と話す。確認の仕方については、「お持ち帰りいただくときに必ずチラシ=画像参照=をお客さまにお渡ししている。チラシ内の注意事項は関係省庁が制定したものを適用している。『お客さま(消費者側)も国のルールにのっとって食ロスの取り組みに賛同している』という確認の上で持ち帰りを行っている」と話す。同様のチラシやポスターを館内や宴会会場に設置して周知を図ることも、持ち帰りルールの合意形成の一助となりそうだ。

 日本ホテルグループ9施設は、2022年に466件の持ち帰り実績があり(夏季の休止期間を除く)、事故、クレーム、トラブル等は皆無だった。mottECOは同グループのほか、セブン&アイ・フードシステムズ(同)、ロイヤルホールディングス(福岡市)など他業種の企業がコンソーシアムを組織して推進しており、コンソーシアム全体では店舗数が750を超え、実際の持ち帰りは2年間累計で7万超とされるが、こちらでも確認された事故は1件も発生していない。

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