関西MaaS 関西鉄道7社が連携 23年夏にアプリ第1弾リリース


山﨑部長(左)と神田担当部長

関西の多くの切符購入可能に 広域でシームレスな移動実現

 関西の鉄道会社7社(Osaka Metro、近鉄、京阪、南海、JR西日本、阪急、阪神)は2022年11月8日、関西地域の交通事業者間の連携を前提としたMaaSシステムを共同で構築し、「(仮称)関西MaaSアプリ」を、23年夏ごろをめどにリリースすることを発表した。関西MaaSは、国内初の鉄道事業者連携による広域型MaaS。25年に開催が予定される大阪・関西万博での活用も期待されている。関西MaaSの進捗(しんちょく)や目指すものなどを、鉄道7社からOsaka Metro都市型MaaS推進本部の山﨑康二執行役員デジタルソリューション部長と、JR西日本デジタルソリューション本部の神田隆担当部長(戦略企画・MaaS)に聞いた。(聞き手=本社・長木利通)

山﨑部長(左)と神田担当部長

 

 ――改めて、関西MaaSとは。

 山﨑 MaaSは、モビリティ・アズ・ア・サービスの略で、さまざまな交通をシームレスにつなぎ、一体となって提供すること。豊富な観光資源を有する関西を広域的に動くには、1社のサービスでは限りがある。まず、鉄道7社が集まり関西MaaS協議会を立ち上げたが、参加しやすいMaaSのコンセプトのもと、条件面など具体的な声掛けはこれからだが、他の交通事業者も含めた関西広域をシームレスに移動できるサービスとしたい。

 神田 2019年に国土交通省が取りまとめた「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会」中間取りまとめでMaaSの分類がなされているが、その中で、関西MaaSは大都市型に当たる。多くの交通事業者を持つ関西だが、関西MaaSは、これらの連携を実現する手段となる。25年には万博が開かれることもあり、この7社による連携が必要となったこともきっかけだ。

 ――関西MaaSにおけるそれぞれの役割は。

 山﨑 当社はもともと公営だったが、鉄道7社では中央のエリアに位置し、あまり色が付いていない中立的な立場を担っている。協議会でも事務局的な役割を担い、広くつなげる橋渡し役となれたらと考える。

 神田 われわれは、関西全体に鉄道網を有するが、大阪の中心部や京都の趣深いエリアなどでは各社が運行する。広く浅いわれわれと、奥深い各社の連携は、広域を範囲とする関西MaaSにおいて欠かせないものだ。

 ――関西MaaSの進捗について。

 神田 23年夏にMaaSアプリのリリース第1弾を発表する。約1年の構築期間を経て、昨年11月から開発に着手している。今は設計の段階で、春からは実際に作り込みに入る予定だ。

 山﨑 本会議体を2週間に1度程度設けているが、下部組織にはいくつかワーキンググループを立ち上げ、各社からメンバーを集めた中で設計の話を議論している。

 ――実際にアプリで何ができるのか。

 神田 観光情報を見たり、チケットストアとして切符が買えたりできる。そこに入る商品の詳細などは検討中だ。地域に特化したアプリである以上、関西エリアの大体の切符が買える状態にはしたい。QRコードの活用なども高度化する中で模索していく。

 山﨑 各個社でもアプリをリリースしており、初めから全て同じ形としてそろえるのは難しい。第1弾では基本的なサービスから立ち上げ、以後は機能を追加するなど、段階的にブラッシュアップしていく。万博は25年4月からであり、まずそこをマイルストーンとしている。

 ――各地域との連携や情報掲載について。

 山﨑 地域との連携や観光情報の提供方法の具体化はこれから。情報発信は各個社のアプリ内でも行われており、重複を避けてシームレスに遷移して確認できるなど情報のコントロールをする。

 神田 今後、各地域でデータベースができていくと思うが、これらが互いにアクセスできるようなことを将来の発展に向けてのポイントとして捉えている。

 ――関西MaaS全体での課題について。

 神田 解決すべき課題はまだ多い。国内では少なくとも、複数の鉄道事業者が協議会を作り、一つのアプリを一から作るという例はない。この3年半には会議体を80回以上行うも、未知の課題が次々と起こってくる。今では構想を打ち出し、周囲からの期待の声も大きい。多くの力を借りながら、皆が前に進むという決意のもと取り組んでいる。

 ――関西MaaSの会社内での位置付けは。

 神田 MaaSは、これからの地域と交通の在り方を一緒に考えるツール。将来に向けても重要な施策だ。エリアの特性に合った形を目指し、多くの地域、関係者と検討している。当社では、「顧客接点のデジタル化」という言葉を使う。購買はリアルからデジタルに移っている。世の中と共に会社のありようも変わっていかねばならない。

 山﨑 都市型MaaS構想「e METRO」を立ち上げ、移動の目的となるサービスを交通と組み合わせながら新しい価値を創出し、大阪のまちづくりの貢献に取り組んでいる。検索や予約はデジタルで対応できても、バリアフリーの環境が未整備だと、本当のシームレスとは言えない。社外との連携も不可欠で、本当の意味で必要なサービスの提供につながるものが関西MaaSであり、重要な施策だ。

 ――アプリの万博開始後の展開について。

 神田 万博の前段階では、チケットの販売や来場者向けのデジタルサービスが始まる。関西で最も利用されるアプリを目指す中、万博のサービスとは連携を深め、サービスインを実現していく。

 山﨑 万博後の姿はこれから描いていく。関西MaaSにおいて万博はゴールではなく、レガシーとして続くものだ。

 ――最後に。

 山﨑 関西MaaS推進連絡協議会では、観光団体やバスやタクシーなど他の交通関係の事業者、自治体が集まる中、関西MaaSの方向性やアプリの立ち上げを宣言した。良い意味で逃げられないところまで来たという覚悟と熱い思いが湧いている。また、万博は公営時代から強く取り組んできた。会場に直接つながる唯一の鉄道機関であり、投資もしてきた。当社だけでなく、関西の経済の活性化につながるものだと確信している。

 神田 各社の戦略が違う中で、いかに共に進むかを見いだしてきた3年間だった。用語や言い回しが違うことに気付き、また共通化を図ってきた。今後は関係する皆さまとの連携が重要になる。ぜひ関西、万博を盛り上げるためにも協力してほしいし、アプリの発表を期待してほしい。

 
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