
足を奪われそうになる歪む床
錯覚を体験、学び発想力を養う
日本発祥の参加・体験型アート「トリックアート」。平面の絵が飛び出したり、角度により違う雰囲気の絵に見えたりする不思議なアートだ。栃木・那須高原と東京・お台場にあるトリックアートの常設館は、これらの作品を見るだけでなく、写真に撮ったり、錯覚を感じたりとさまざまな体験ができる。思い出づくりとともに、芸術性を学び、発想力を養える体験・見学地と、中学や高校の修学旅行で人気を集めている。
館内でアートの制作体験が新たに可能になった
「那須とりっくあーとぴあ」は、国内最大のトリックアートのテーマパークだ。「トリックアートの館」「トリックアート迷宮?館」「ミケランジェロ館」の三つの施設で構成。さらに敷地内の体験館「那須ホワイトスタジオ」では、アートの制作体験ができるプログラムを新たに用意した。
皿、風鈴、仮面、人形などの絵付けに加え、くぼんだ部分が錯覚で出っ張って見える「ホロウマスク」や、下地作りから体験する「フレスコ画」にも挑戦できる。将来的には七宝焼き、シルバーアクセサリー、ガラス彫りなど、焼成、打刻、研磨工程なども体験できる、より芸術性の高い体験も用意していく。
併設している制作工房ではアーティストが新作を制作しており、来訪者は気軽に見学ができる。また、今年からアーティストによる絵付け教室も予約制で新たに始めることになった。
体験学習を行うと同時に敷地内3カ所の美術館巡りも楽しみたい。
トリックアートの館は、建物の構造自体も工夫が凝らされたアートの展示館。昨年リニューアルし、展示がさらに充実した。足を奪われそうになる「歪(ゆが)む床」や、森の中にいるような錯覚にとらわれる「動物の森」など、内装のほぼ全てがトリックアートになっている。
トリックアート迷宮?館は、魔法の世界をトリックアートで再現した館。立つ位置により体験者2人の体の大きさが変わる「エイムズの部屋」が有名だ。
ミケランジェロ館は、イタリアルネサンスの三大巨匠の名作を、トリックアートで再現。「最後の晩餐(ばんさん)」や「アテネの学堂」「システィーナ礼拝堂」が見る人を圧倒する。アートの歴史を体感しながら学んでほしい。
▽栃木県那須郡那須町高久甲5760。TEL0287(62)8388。不定休で、午前9時半から午後6時まで営業(8月は午前9時から、10~3月は午後5時まで)。入場料3館共通大人2800円、中学生以下1900円。
足を奪われそうになる歪む床
開放感あふれるお台場に展開 東京トリックアート迷宮館
AR対応のトリックアート「ドラキュラのおやつ」
「東京トリックアート迷宮館」は、江戸をテーマにした和風のトリックアートをはじめ、多くの人気作品を展示する体験型の美術館だ。都内屈指の人気エリアお台場の複合施設に展開。コロナ禍の中、館内や隣接の商業施設は感染防止対策を徹底するほか、海浜公園を見渡す開放的なデッキがあり、密を回避できる。
館内に入り、まず目にするのは「江戸エリア」。「華やかな江戸の彩」をコンセプトに、色彩豊かで親しみやすいモチーフの、和風の作品を数多く展示している。
例えば「跳び出す鳥獣戯画」は、国宝・鳥獣人物画に描かれたカエルやウサギが立体的に跳び出す様子を表現。鑑賞者は驚いて捕まえようとしたり、一緒に走り出したりするなど、現実と絵が一体になったユニークな写真が撮れる。
次の「愉快な忍者とお化けエリア」では、忍者やお化けのトリックアートが来場者を出迎える。隠し扉などさまざまなトリックも仕掛けられていて楽しい。
隠し扉を抜けた先は「トリックアート名作ギャラリー」。過去の名作から最新作まで、多くの作品を展示している。
スマートフォンの画面をかざすと静止画のアートが画面の中で動き出す「AR(拡張現実)」対応のトリックアートも展示。利用には無料アプリのダウンロードが必要だが、スマートフォンを持たない生徒らにはスタッフが端末を使い、体験をサポートする。
▽東京都港区台場1の6の1、デックス東京ビーチシーサイドモール4階。TEL03(3599)5191。不定休で、午前11時から午後9時まで営業。入場料大人千円、中学生以下700円。