観光庁は、国内観光旅行の振興について、宿泊観光旅行を重視し、連泊客とリピート客の増加を目標に施策を展開していく方針を明確化した。目標の実現には旅行者の満足度(CS)向上が必要だとして、CS向上につながる観光地づくりやサービスづくりを促進する。2010年度までに観光庁が実施する計画として、1月28日に発表した「観光庁アクションプラン」の中に位置づけた。
観光庁は、旅行消費額が高く、地域経済の活性化に効果が大きい宿泊観光旅行を重視。しかし、日本人の宿泊観光旅行の年間宿泊数は、1人当たり2.42泊(07年度)に低迷。観光立国推進基本計画では2010年度に4泊に増やすのが目標だが、2年連続で減少している。宿泊観光旅行の年間回数も1人当たり1.50回(同)にとどまっている。
アクションプランに定めた国内観光旅行の振興策に関して観光庁の本保芳明長官は、1月28日の専門紙向け定例会見で、「人口減少が進む中、1泊2日中心の旅行形態を変えなければ、市場は縮小してしまう。休暇取得の促進などで旅行回数を増やせればいいが、難しい面もある。連泊客とリピート客の増加を目指すしかない。そのためにはCS向上を主軸にした改革を促進する必要がある」と説明した。
本保長官は改革すべき点の1つとして、「観光地のつくり、旅行・宿泊のサービスや料金体系の多くが1泊2日の滞在を基本にした構造になっている。2泊3日以上の滞在につながる構造に転換する必要があるのではないか」と指摘した。
アクションプランの中では、施策の方針を次のように明確化。(1)主に1泊2日の旅に対応してきたシステムを、2泊3日以上の滞在型の旅を受け入れる方向に転換する(2)旅行者の満足度を高め、連泊・リピート客の増加を図ること(旅の品質向上)を基本的なスタンスとする(3)(旅行者層などに)重点分野を設定し、そのセグメント(区分)の特性に応じて適切な施策を講じる──。
具体的には、2泊3日以上の滞在につながる観光地づくりを目的とした観光圏の整備を推進するほか、旅行者のCS向上につながる施策を新たに打ち出す。09〜10年度にかけて、観光地と宿泊施設のCSを測定するための標準的な手法を設定し、取り組み意欲の高い観光地、宿泊施設から順次、測定結果に基づくCS向上への取り組みを促進する。測定手法は、民間の企業や団体が使用している既存手法の活用を含めて検討し、地域づくりや宿づくりの参考となる共通の基準を設定する。
また、旅行者層などに重点分野を設定し、旅行需要を喚起する環境整備にも取り組む。例えば、小学生の子どもがいる家族、団塊世代、大学生といったようなセグメントに対し、特性に応じた施策を講じる。重点分野の設定にあたっては、観光庁が実施する旅行実態調査の結果などを参考にすることにしている。
短期的な需要喚起 官民、地域で協議
観光庁は、観光庁アクションプランの中で、短期的な需要喚起策に関して、行政、産業界、地域などが具体策を話し合う場を今年3月末までに立ち上げる方針を示した。
協議の場を通じて、キャンペーンなどを含めた短期的な需要喚起策を関係者に検討してもらう。観光庁では、企業や団体、地域などで個別に展開されている事業を連携、連動させて、相乗効果を発揮できるようにしたい考えだ。