地域課題への共感、関係性が鍵
ある地域に何度も通う旅・帰る旅。「第2のふるさと」と呼べるような場所に―。リクルートのじゃらんリサーチセンターが6日にオンライン開催した観光振興セミナーで、客員研究員の北嶋緒里恵氏が「行く旅から帰る旅へ、新需要ポテンシャル分析」と題して発表した。コロナ禍に伴うライフスタイルの変化、働き方の多様化などを踏まえ、観光・レジャーとは違う、地域の課題に関わりながら、地域と継続的な関係性を築いていく新たな旅行市場を開拓できる可能性を報告。地域との協働による実証事業も推進中で、仮説の実践に取り組んでいる。
「帰る旅」については、「何度も、ある地域へ、ある場所へ、通う旅・帰る旅」「旅先の人たちと、一方通行の関係性ではなく、“相思相愛”の関係性を築くことで『帰る場所』ができ『帰る旅』となる」と定義。観光庁も昨年10月、ほぼ同様の趣旨で「第2のふるさとづくりプロジェクト」を立ち上げており、新たな観光需要を創出するモデル事業を実施している。
背景には、コロナ禍によるテレワークの増加、ワーケーションの登場など、社会の変化に対し、働き方や生き方を自問する人が増加していることなどがある。一方、観光業界としても、コロナ以前から国内宿泊観光の実施率が低下傾向にあるなど、従来型の旅行に加え、新たな需要を創出する必要性が指摘されている。
「帰る旅」の潜在需要を探ろうと、じゃらんリサーチセンターは今年2月、全国の3千人を対象にウェブアンケートを実施した。今後行きたい旅行のコンセプト・ニーズを聞いた結果は、「自分の居場所がある場所に行く旅行」が44.3%、「第2の故郷と呼べるようなところに帰省するような旅行」が38.0%だった。60%前後に達する宿で食や温泉を楽しむ旅行よりは数値が低いが、イベント参加や趣味のスポーツ、買い物などを楽しむ旅行の30~40%を上回る結果だった。
北嶋氏は「コロナ禍で『自分はどうありたいか』を考える時代に。同時に、民泊や定額住み放題サービスなどの新たなビジネスモデルが出てきている。社会の変化で新たな旅行需要開拓の必要性が見えてきた。地域側が主体となって、(自宅、職場に次ぐ)サード・プレイス的な居場所を旅先につくることは実現可能なのではないか」と指摘した。
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