
成田空港に到着した中国からの団体ツアー客と、出迎えた溝畑長官ら日本の観光関係者(20日)
外国人の訪日観光に回復の兆しがみえてきた。東日本大震災、原発事故の影響で途絶えていたアジア諸国の団体ツアーが西日本を中心に再開され、中国からは関東への団体ツアーも再開された。観光庁は風評の払しょくに向けて情報発信を強化、海外の旅行会社などを地方視察に招く緊急事業も展開している。市場ごとの状況を踏まえ、プロモーションを本格化させる方針。
訪日外国人旅行者数は、地震発生後の3月12〜31日が前年同期比で約7割減。各国が日本への渡航に自粛や注意の勧告を出し、団体ツアーもストップしていた。4月も旅行者数としては月累計で約6割減だったが、団体ツアーの一部が東アジアや東南アジアから再開されるようになった。
香港からは4月16日以降、北海道、立山黒部、関西、九州、沖縄を目的地とした一般ツアーが実施されている。韓国や台湾も4月中旬以降、旅行会社やメディアが参加する視察旅行を含めた団体ツアーを実施。シンガポールからは4月30日、関東エリアへの団体ツアーが実施された。
最重要市場の1つ、中国からは4月29日に関西、九州へのツアーがそれぞれ再開された。中国政府は同日、日本への渡航について被害が深刻な地域を除き、自粛勧告から注意喚起へと勧告レベルを緩和。今月20日には関東への団体ツアーも再開された。このほか中国発着のクルーズ船「レジェンド・オブ・ザ・シーズ」の九州への寄港も8月に再開されることが決まった。
観光庁は風評の払しょくに向け、日本政府観光局(JNTO)などと連携し、旅行の安全性にかかわる情報の発信に注力してきた。現地メディアなどに対するPRでは、溝畑宏長官が4月10、11日に中国・北京、4月22日に韓国・ソウルを訪問。5月12日には武藤浩次長が台湾を訪問した。
また、地方自治体や観光組織も動き出している。例えば九州では、九州7県の知事や副知事をはじめ、九州観光推進機構、九州運輸局のトップらが今月17、18日に韓国のソウルと釜山を訪れ、誘致活動を展開した。
22日、東京で開かれた日中韓首脳会談では、日本観光の活性化に向けた協力が宣言に盛り込まれた。観光庁の溝畑長官は会談に先立つ20日の会見で「日中韓首脳会談を潮目にして、まずはアジアを回復させたい」と述べた。インバウンドに携わる中小事業者への影響も懸念し、「最短の期間で需要を回復させる必要がある」との考えも示した。
観光庁は、海外のメディアや旅行会社を地方視察に招く招請事業を順次実施していく。同事業は全額を国庫負担する緊急事業として展開する。その上で重点市場ごとに訪日観光への反応などを把握しながら、メディアなどを通じた一般消費者へのプロモーションも本格化させる。

成田空港に到着した中国からの団体ツアー客と、出迎えた溝畑長官ら日本の観光関係者(20日)