スポーツを通じた観光の活性化策が議論されている。観光立国推進本部(本部長=前原誠司国土交通相)の作業部会「観光連携コンソーシアム」の第2回会合が16日に開かれ、国内観光、インバウンド、両面から施策のあり方を探った。プロスポーツの観戦やマラソン大会への参加といったスポーツにかかわる旅行に温泉などに代表される地域の観光サービスを結びつける必要性、国際競技大会の誘致を通じた海外への情報発信の重要性などがテーマに挙がった。
関係省庁の副大臣や大臣政務官をメンバーとする作業部会は、日本サッカー協会名誉会長の川淵三郎氏、JTB旅行マーケティング戦略部長の加藤誠氏を招いてヒアリングを行った。
スポーツ観光の方向性として、JTBの加藤氏は、「スポーツを『みる』『する』旅行に終わらせず、地域の特性を生かした観光要素を取り入れてサービスとして複合化していくべき」と指摘。マラソン大会による誘客拡大やリピーター確保の成功事例、温泉とサイクリングを組み合わせた商品開発の動きなどを紹介した。
日本サッカー協会の川淵氏は、Jリーグの試合開催による集客効果や地域間交流、2002年日韓共催のワールドカップを契機とした地域の国際化など、サッカーを中心にスポーツが地域の活性化に貢献した事例を挙げた。
川淵氏は外国人の訪日促進に関しても、「スポーツの国際大会の招致は海外への観光PRに欠かせない。大会期間中に日本の文化などが世界に発信される効果は大きい。また、施設などの受け入れ態勢の整備にもつながる」と指摘した。
国内観光、インバウンドを含めたスポーツ観光の推進態勢については、加藤氏が「カナダスポーツ観光連盟」の活動を紹介した上で、調査分析から普及までを担う、国、地域、企業が連携した推進組織の必要性を訴えた。
このほか意見交換では、家族の同伴が期待できる少年スポーツの大会は国内観光の振興につながるといった指摘に関連し、旅行費用の軽減策が話題に。「高速道路や公共交通の料金の新たな割引制度、家族旅行費用の所得控除制度なども考えられるのでは」(加藤氏)といった提言も出た。
作業部会では、スポーツ観光の推進に向けて省庁間の連携策をとりまとめる考え。まちづくりとの連動や国際競技大会の誘致のほか、海外からの誘客に向け、相撲や武道などの観戦プログラムの充実、アジアを中心に増加が期待されるスキー客やゴルフ客の受け入れの促進などの課題も挙がっている。