「入港審査の待ち時間を短くしてほしい」。11月26日、訪日外国人旅行者を2千万人にする戦略を話し合う政府の観光立国推進戦略会議・観光実務に関するワーキンググループ(WG)の中で、多くの委員が入国審査の待ち時間を課題に取り上げた。今回の議題の1つは「受け入れ態勢」で、カード決済や両替、交通・観光情報の案内などに関する意見も出たが、「入国審査は他のテーマと違い、政府の取り組み次第」と改善を求める声が強かった。
外国人の入国審査では、観光立国推進基本計画に「全空港での最長審査待ち時間を20分以下」にする目標がある。今年10、11月の調査によると、成田空港では15日間のうち12日間が最長待ち時間20分未満と比較的スムーズだったが、関西空港は11日間のうち20分未満の日は1日だけで、20〜40分台が9日間、54分に達した日もあった。
クルーズ船でも課題がある。クルーズ船は一度に多数の乗客が乗降する上、上陸後の滞在時間が平均約9時間と短い。審査待ち時間の短縮が求められているが、今年3月には神戸港に入ったクルーズ船が審査手続きに時間を要することを理由にナイトツアーを取り止めた事例があったという。
WGの会合には、法務省の入国管理局担当者も出席して対応を説明した。空港では、外国人用・日本人用のレーンの弾力的な運用や整理要員の配置、チャーター便が就航する地方空港への職員派遣などに取り組んでいる。クルーズ船に対しては、出港地や沖合での職員の乗り込みによる船内審査も実施している。
しかし、有識者らが務めるWGの委員からは厳しい指摘も出た。チャールズ・レイク氏(アメリカンファミリー生命保険会社会長)は「国の第一印象を決める上で重要。受け入れ態勢にかかわる他の課題と違い、入国審査は完全に政府のコントロール化にある。必ず改善するとの姿勢で臨むべき」と指摘したほか、「20分以下を目標に掲げているが、成田空港から都心までの時間を考えたら10分に」と訴えた。
このほかにも、「成田空港などで短縮に成功した取り組みは地方空港にも広げてほしい」(桑野和泉・玉の湯社長)、クルーズ船に関しても「神戸港のケースを想像するに、乗船客の不満は相当なものだったはず。船内審査などにもっと力を入れてほしい」(島田晴雄・千葉商科大学学長)などの意見が出た。
WGの第3回会合