政府は12月25日、2010年度予算案を閣議決定した。観光庁予算は126億5千万円で09年度当初予算に比べて約2倍に増額された。行政刷新会議の「事業仕分け」で概算要求額から半額を削減されたものの、厳しい財政事情の中で成長分野として異例の伸び率となった。外客誘致関係事業費が約3倍となったほか、休暇の取得・分散化の促進に向けた社会実験に事業費が計上された。
政権交代後の概算要求で、観光庁は09年度当初予算比約4倍の251億4千万円を要求していた。しかし、事業仕分けの評価を受け入れた予算編成となり、要求に対し外客誘致関係事業が半額削減、観光圏整備事業が8割削減などとなった。
予算の主な内訳は、外客誘致関係の「訪日外国人3千万人プログラム」の事業費が94億8千万円、観光圏整備などに充てる「地域の再生・活性化」の事業費が6億4千万円、観光統計の整備費が3億3千万円、休暇の取得・分散化の促進実証事業費が3千万円。日本政府観光局(JNTO)の運営費交付金は19億1千万円。
VJCに87億円 受け入れ整備は2億
訪日外国人3千万人プログラムのうち、訪日旅行促進(ビジット・ジャパン)事業が86億5千万円と大幅な伸び。中国をはじめ韓国、台湾、香港を最重点市場に、インド、ロシア、マレーシアの新規市場を追加した15の重点市場に対し、プロモーションを強化する。
海外プロモーションでは、CNNインターナショナルなどの国際放送を使った各国を横断したテレビ宣伝の実施は見送ったが、市場ごとにテレビ、ウェブなどの媒体を通じた宣伝を増やす。
このほか訪日外国人3千万人プログラムでは、受け入れ環境の整備事業に2億円。地域の受け入れ態勢の現状を客観的に評価し、改善の参考にしてもらうための基準づくりに取り組むほか、受け入れを担う戦略拠点の整備として、主要な空港や観光交流施設などで整備計画づくりや実証事業などを支援する。
観光圏の新規採択 来年度で終了へ
地域の再生・活性化事業の柱、観光圏整備事業は、事業仕分けの結果を受けて、09年度当初予算とほぼ同額の6億円になった。概算要求では補助率を現行の4割から6割に引き上げるよう求めたが、認められなかった。
各観光圏で補助の対象となる事業には、観光プログラムの開発や2次交通の整備など従来のソフト事業に加え、広域観光につながる観光案内所の整備、歴史的建造物の復元に限ってハード事業にも活用できるようにした。
観光圏は現在30エリアあるが、補助事業を新規に導入する観光圏の採択は10年度で終了する見込み。10年度に新規採択する観光圏は5エリア程度とみられる。
制度づくりに向けて 休暇分散で社会実験
休暇の取得・分散化の促進事業は、概算要求で7千万円を要求したが、事業仕分けで「大幅縮減」の判定を受けて6割減額の予算規模になった。事業の内容や規模を一部見直すものの、複数の地域の協力を得て親の有給休暇と子どもの学校休業を一致させ、観光の需要創出にもつながる家族で過ごす休暇を促進する社会実験を行う。休暇分散化のあり方を具体的に示し、将来の休暇制度づくりなどに生かす。