観光庁はこのほど、2018年度~20年度の3カ年の訪日プロモーション方針を公表した。アジア市場では、拡大するリピーター層のさらなる取り込み、個人旅行の多様なニーズへの対応などを強化。欧米豪市場では、デジタルマーケティングを駆使して訪日無関心層の新規需要などを開拓する。地方への誘客、高所得者や長期滞在者の誘客なども促進する。
観光庁は、訪日旅行促進の重点市場20カ国・地域ごとに訪日プロモーション方針を策定。今回は東アジア4市場の概要について紹介する。
【韓国】アウトバウンド全体の拡大、訪日経験層の増加傾向を踏まえ、リピーター(17年訪日観光客の64%)の取り込みを図るとともに、訪問の少ない地方への誘客を強化する。
《ターゲット》(1)若年層(主に20~30代=年代別の最大ボリューム層)(2)家族層(30代以上の旅行形態として最多)(3)余裕層・特定テーマ旅行者(潜在訪日層)
《課題・対応》リピーターの取り込み▽訪問の少ない地方への誘客強化(東北、北陸、中国、四国などへの旅行商品の造成、販売の支援など)▽口コミによる情報拡散の促進
《主な訴求テーマ》ターゲット(1)=旅行スタイルに合わせた自由な旅(一人旅、女子旅、LCC利用旅行、SNS映え、話題性)▽ターゲット(2)=安心で上質な旅行(ドライブ旅行、大人の親子旅行、スモールラグジュアリー)▽ターゲット(3)=趣味を満たす安らぎ旅(ゴルフ、登山、釣り、温泉、グルメ、日本酒など)
《取り組みの方向性》リピーターの取り込み=現地のトレンドを反映した旅行テーマの発信▽地方誘客の強化=旅行業界などとの共同プロモーション、商談機会提供による地方旅行商品の造成・販売支援▽口コミによる情報拡散促進=ウェブ・SNS媒体での情報発信強化
【中国】急速に進む個人観光(17年訪日観光客の62%)に対応し、良質なリピーター(同40%)の確保を図るとともに、内陸都市部を含め未訪日層の開拓に向けた取り組みを強化する。
《ターゲット》(1)20~30代若者層(年代で最大ボリューム層)(2)家族旅行層(旅行形態で最大ボリューム層)=ともに内陸都市部にも拡大
《課題・対応》個人観光への対応・良質なリピーターの確保(テーマや地域の魅力を深掘りする観光「深度游」の発信を強化、「食」「体験」など多様なテーマを訴求し競合国と差別化など)▽未訪日層の開拓(内陸都市部を含め、各地域の嗜好や旅行スタイルに合わせたプロモーションの実施など)
《主な訴求テーマ》ターゲット(1)=地方誘客も見据えた深度游の魅力(夫婦旅行=文化体験など記念に残る旅行/友人旅行・一人旅=プチぜいたく、スキー旅行など自慢したい旅行)▽ターゲット(2)=日本の代表的な魅力(親子旅行=子ども向け体験など親子の思い出づくり/40~50代の家族旅行=温泉、クルーズ、自然景勝地など)
《取り組みの方向性》個人観光への対応・良質なリピーターの確保=深度游の発信強化、デジタルマーケティングの徹底強化▽未訪日層の開拓=内陸都市部を含む未訪日層向けプロモーションの展開、ビザ緩和と連動したプロモーションの展開
【台湾】リピーター層(17年訪日観光客の80%)のさらなる訪日回数の上積みを図るとともに、中南部居住層の訪日促進のため、ターゲットを細分化し、取り組みを強化する。
《ターゲット》(1)20~30代個人旅行層(最大ボリューム層)(2)40~50代家族旅行層(最大ボリューム層)(3)中南部リピーター層(訪日3回以上)(4)中南部未訪日・潜在リピーター層(5)教育旅行
《課題・対応》ターゲット(1)(2)=訪日回数上積みに向けた情報発信、地方の魅力発信の強化(東北をはじめとした地方の特色ある魅力など、日本各地の新鮮な情報、ニッチな情報の発信により、訪日外国人が少ない地方への関心を喚起)▽ターゲット(3)=訪日回数の上積みに向けた情報発信▽ターゲット(4)=未訪日層の開拓▽ターゲット(5)=若年層の訪日機会増加
《主な訴求テーマ》ターゲット(1)=地方での文化体験、ゲートウェイ都市観光▽ターゲット(2)=安心、安全の親子旅▽ターゲット(3)(4)=夢中になる日本旅行(訪日3回以上=四季、温泉、歴史、桜など日本らしい自然景勝地、日本食、訪日2回以下=都市観光、地方部の体験型観光)▽ターゲット(5)=台湾側教育関係者と日本側自治体などのマッチング(学校交流、ホームステイ)
《取り組みの方向性》訪日回数上積みに向けた情報発信=新たな経験・発見の発信強化、台湾人目線での魅力発信の強化▽地方の魅力発信の強化=地方へのさらなる誘客促進に向けた情報発信強化▽未訪日・潜在リピーター層向けプロモーションの強化=目に触れやすい手段でのPRの強化、訪日教育旅行の誘致・マッチングの強化
【香港】すでに成熟している香港市場(17年訪日観光客のうち個人観光91%、リピーター83%)では、さらなるリピーターの確保、訪日回数の上積みを図るとともに、未訪日層の掘り起しの取り組みを強化する。
《ターゲット》(1)20~40代女性(最大ボリューム層)(2)未訪日層(10~20代)
《課題・対応》ターゲット(1)=テーマ性のあるプロモーション(地域の限定イベントやコンテンツのリアルタイムな発信など)、地方路線拡大に向けたプロモーション(道東、東北、北陸、中国、四国など地方への直行便の新規就航・路線定着を支援など)▽ターゲット(2)=未訪日層の掘り起ここし(OTA、LCCなどと連携して気軽な訪日旅行商品を訴求)
《主な訴求テーマ》ターゲット(1)=「ゆるたび」(花や自然の景色、小動物や温泉、食の体験)、夫婦・カップル旅行(夜景、公園などデートスポット、ウエディング)▽ターゲット(2)=ゲートウェイ都市観光(ショッピング、テーマパーク、日本食)
《取り組みの方向性》テーマ性のあるプロモーション・地方路線拡大に向けたプロモーション=「ゆるたび」の発信強化やSNSなどを通じたタイムリーな情報発信、共同広告などによる地方旅行商品の造成・販売支援、現地航空会社と地方自治体のマッチング支援▽未訪日層の掘り起こし=OTA、LCCなどとの共同プロモーション