観光庁は、訪日観光の回復に向け、現在各地で実施している海外報道関係者の招請事業などにより原発事故に伴う風評を払しょくした上で、10月から本格的な誘客キャンペーンに取り組む。プロモーションなどに新しい手法を取り込もうと、観光・運輸産業にとどまらず産業界と横断的に連携する「訪日旅行促進官民連携協議会」も19日に発足させた。
溝畑宏長官は、19日の記者会見で「安心、安全のイメージを回復させ、本格的なキャンペーンで秋以降の需要喚起につなげたい」と述べた。10月からのキャンペーンには、東アジアを中心に約20億円の予算を投入する。
また、溝畑長官は中国に対する個人観光査証(ビザ)の9月からの要件緩和に関しても「国慶節の旅行シーズンを控え、大きなはずみになる」と期待。今月21日にはタイに続き、中国・北京を訪れ、現地の旅行会社や報道機関に訪日観光をアピールした。
発足させた官民連携協議会は、溝畑長官と日本観光振興協会の西田厚聰会長を議長として、主要な経済団体のトップがメンバー。実施する事業は従来と違う視点を目指し、「ビジット・ジャパン・プラス活動」と呼称する。複数の業界をまたがった割引サービスの提供や企業の報奨旅行の誘致などに取り組む。
協議会には作業部会として、誘客効果の高い商品・サービスづくりを目指す新分野開拓ワーキンググループと、商用客や企業の会合の誘致を目指すビジネス観光促進ワーキンググループを置く。経済団体をはじめ、小売業、海外で事業を展開している企業などに幅広くメンバーになってもらう。ワーキンググループは9月上旬にも初会合を開き、具体化できる事業から順次実施していく。
中国や台湾に 情報発信を強化 JNTO
JNTOは訪日客を早期に回復させようと、従来の施策に加え、中国、台湾、タイ向けの情報発信を強化している。すべての市場に向けては、17日、間宮忠敏理事長が秋からの訪日観光を呼びかけるメッセージをJNTOウェブサイトを通じて発信した。
中国向けには、中国で著名な日本人コラムニスト、加藤嘉一氏に協力を依頼し、中国人旅行者に人気の「ゴールデンルート」を9月上旬に巡ってもらい、観光地の状況を旅行記としてブログから発信してもらう。中国版ツイッター「微博」も活用してもらう予定。
台湾に対しては、復興航空が東北向けのチャーター便を再開する機会をとらえ、交流協会、東北観光推進機構と連携し、今月13、14日に台北市で東北観光をPRするイベントを開催した。タイに対しては、秋の学校休暇のシーズンを前に、大使館と連携し、訪日旅行を呼びかける新聞広告を出す。
すべての市場に向けた間宮理事長のメッセージでは、東日本大震災から5カ月を経て、各国からの支援に改めて感謝するとともに、多くの外国人が日本観光を楽しんでいることなどを強調した。