観光庁、観光産業の強化策話し合う検討会を発足


10日に開かれた観光産業政策検討会の初会合

10日に開かれた観光産業政策検討会の初会合

 観光庁は、観光事業者などの有識者に観光産業の強化策を議論してもらう観光産業政策検討会を発足させ、10日に初会合を開いた。初会合では、宿泊業や旅行業の競争力強化、インバウンド振興を契機とした産業の活性化などに関する課題が委員それぞれの視点から挙げられた。座長には一橋大学大学院商学研究科教授の山内弘隆氏を選び、今年度末までに具体策を提言としてまとめる。

 観光産業の強化は、井手憲文長官が重要施策の1つに掲げた課題。初会合で井手長官は、観光地域づくりや訪日客誘致の施策の一方で、観光産業の強化は施策面で遅れているとした上で、「日本の観光産業を世界の最高レベルに飛躍させたい。産業を強くするための具体的な方策を示してほしい」と議論を促した。

 宿泊産業の課題に関しては、岩手・つなぎ温泉の旅館、大観の会長で国際観光旅館連盟会長の佐藤義正氏が、経済・旅行環境の変化に対する「旅館の経営改善の遅れ」を指摘した。その要因には、同族経営が多いことなどによる経営の組織体制の不十分さ、設備投資や設備維持費の負担が重いことによる財務基盤の弱さなどを挙げた。

 宿泊産業に対しては産業技術総合研究所サービス工学研究センター・副研究センター長の内藤耕氏が「本当に高いサービスを提供できているのか。商品や経営を足元から見直すべき。エモーショナルな経営ではなく、科学的、近代的な経営が必要ではないか」と問題提起。人口減少と供給過剰の中で淘汰を伴う再生が必然とも指摘した。

 一方で、新潟・越後湯沢温泉の旅館で、観光圏整備法に基づく雪国観光圏の事務局を務めるいせん社長の井口智裕氏は「地方における旅館業は単なる宿泊業ではない」と強調。地域の農業や食品加工業などとの結び付きに触れ、「地方の産業は疲弊している。その中で共生して生きながらえている。地域のブランドを高めて生き残るには、事業者間の連携と、それをバックアップするしくみが必要」と訴えた。

 このほか、旅行業の課題に関してJTB社長の田川博己氏が、インターネットの普及などの環境の変化の中で「旅行業の企業価値を再生する必要がある」と指摘。インバウンドに関しては、日本観光振興協会会長の西田厚聰氏が、競合国並みに国の推進態勢を強化し、産業界の意欲を引き出す必要性を強調した。また、議論の具体化に向けて、日本経団連副会長・観光委員長の大塚陸毅氏が「民間と行政の役割分担を明確にし、提言をアクションにつなげることが重要」と語った。

 他の委員は次の通り(敬称略)。

 大木哲也(サービス・ツーリズム産業労働組合連合会会長)、上山康博(百戦錬磨社長)、百木田康二(トップツアー執行役員経営管理本部副本部長兼経営企画部長)、小杉眞弘(マリオット・インターナショナル日本支社長)、小林哲也(帝国ホテル社長)、佐々木経世(イーソリューションズ社長)、沢登次彦(リクルートじゃらんリサーチセンター長)、丹呉泰健(読売新聞グループ本社読売新聞東京本社監査役)、鍋山徹(日本政策投資銀行産業調査部チーフエコノミスト)、矢ヶ崎紀子(首都大学東京都市環境学研究科観光科学域特任准教授)、湯浅智之(リヴァンプ副社長兼COO)

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