観光庁、宿泊業の生産性向上へ事例集 人手不足に”カイゼン”促進


宿泊業の生産性向上事例集のサイト。テーマ別に旅館・ホテルの取り組みを動画などで紹介

旅館・ホテルの取り組み、動画で紹介

 観光庁はこのほど、日本旅館協会と連携して2018年度に実施した「宿泊業の生産性向上推進事業」の成果を「宿泊業の生産性向上事例集2」にまとめた。16年度の同様の事業で作成した事例集の第2弾となる。さまざまな規模の旅館・ホテルが実践した業務効率化や付加価値向上につながる“カイゼン”の好事例を集めた。人手不足が深刻となる中、生産性向上のモデルとして宿泊業界に周知し、個々の施設での取り組みを促していく。

 同事業では、旅館・ホテルを対象に全国各地で実施したコンサルティング、ワークショップなどを通じてモデル事例を創出した。事例をまとめたテキストや動画は、16年度の事例を含めてウェブサイト(http://www.shukuhaku-kaizen.com/)で閲覧、視聴できる。日本旅館協会では、動画を収録したDVDと冊子を会員施設に配布した。

 「マーケティング」の章では5施設の事例を紹介。このうち愛隣館(岩手県花巻市、100室)は、赤ちゃんや子どもに優しい旅館としてのブランドイメージを強化するため、アレルギー対応の充実に取り組んだ。専門家による社員向け研修、専門食材を使ったメニュー開発などを行った結果、赤ちゃん連れのプランの売り上げを増加させた。

 「シフト改善、中抜け勤務の解消・見直し」の章では2施設の事例を紹介。あぶらや燈千(長野県山ノ内町、35室)では、中抜け勤務の体力的な負担に伴うスタッフの離職などの課題解決に取り組んだ。時間帯別に業務項目を配列した一覧を作成し、どの業務をどの時間帯にどこの部署が担当するかを定めたマルチタスク制を導入。交代勤務制によって中抜け勤務を削減した。

 「人材育成・定着化」の章では2施設の事例を紹介。花月亭(静岡県下田市、21室)は、接客スタッフの一連の業務を動画に撮影し、新人スタッフ向けに動画マニュアルを作成した。ネット上にスタッフだけが視聴できる形式で公開したほか、施設内の必要な場所にQRコードを表示し、スマートフォンをかざして常時確認できるようにした。

 「IT化・機械化・道具化」の章では、プラザホテル豊田(愛知県豊田市、72室)によるITを活用した情報共有と外国人対応の事例を紹介。フロントとスタッフの情報共有には、端末に情報伝達補助ツールアプリやグループチャット機能を導入して連絡系統を改善。外国人客の対応では「ポケッタブル翻訳機」を導入し、コミュニケーションを円滑化するとともに、接客時間の短縮につなげた。

 この他に「人時生産性の向上」「業務改善」「マニュアル化・マネジメントの徹底」などの取り組み事例を紹介している。

 観光庁では、生産性向上の好事例を全国の旅館・ホテルに発信し、人手不足の緩和▽賃金上昇と就職希望者の増加▽付加価値の創出▽売り上げ、客数の増加―につなげたい考えだ。特に人手不足に関しては、外国人就労の新たな在留資格「特定技能」を活用する旅館・ホテルには、生産性向上の実践、国内人材の確保への努力が前提条件となることから、好事例を生かした取り組みを期待している。

宿泊業の生産性向上事例集のサイト。テーマ別に旅館・ホテルの取り組みを動画などで紹介

 
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