観光庁、宿泊施設の登録制度改正視野に検討へ


 国際観光ホテル整備法に基づく旅館・ホテルの登録制度のあり方が議論を呼びそうだ。観光庁は、外国人旅行者を2020年に2千万人にする目標を見据え、宿泊施設の外客受け入れに関する検討会を近く立ち上げる。その検討テーマの1つが登録制度だ。登録制度に対しては、総務省から「外客の受け入れ促進に必ずしも有効に機能していない」との指摘もある。検討会では2千万人実現につながる制度のあり方を議論、法改正も視野に入れている。

 検討会は、宿泊事業者をはじめ観光業界関係者、学識経験者などを委員として、8〜9月の間に立ち上げる。外客2千万人に向けた宿泊業への政策全般について検討。2011年度予算の概算要求に反映させるため、来年6月をめどに議論を集約する考えだ。

 検討会での登録制度の見直しについて、観光庁観光産業課の加藤隆司課長は「外客受け入れ態勢の整備の中で必要だという結論に至れば、整備法改正も検討する。登録基準の厳格化など、制度改正に向けて既定の方針があるわけではない。タブーを設けることなく議論したい」と説明した。

 登録制度の運用に関しては、総務省が今年3月、国土交通省に対する政策評価の中で改善を勧告。登録施設への意識調査を基に、全体の約4割が外国語による接遇を実施していないことなどを挙げ、「登録制度の創設の趣旨からはかい離した実態となっており、外国人旅行者の受け入れ促進に必ずしも有効に機能していない」と指摘した。

 観光庁では改めて、すべての登録施設を対象にアンケート調査を実施している。整備法に基づく登録基準や外客の利便増進のための努力義務などについて、登録施設の実態を把握するのが目的で現在、集計作業中だ。検討会では実態調査の結果を踏まえた議論を進める考えだ。

2千万人時代へ 政策対応が課題
 登録制度が検討テーマに挙がっているのは、総務省の勧告なども背景にあるが、第一の目的は外客2千万人の実現に向け、宿泊施設の受け入れ態勢の整備を促進することにある。今年3月には有識者で構成する観光立国推進戦略会議が、政府に対して2千万人実現への取り組み強化を提言するなど、新たな政策的な対応が求められている。

 提言には、登録制度のあり方とかかわりの深い指摘もある。2千万人時代の宿泊施設の「受け入れ態勢のあるべき姿」として、「安心して宿泊施設を選べるよう、施設やサービスの格付けを含めた情報提供が十分実施されていること」と明記されたほか、外国語による表示や案内、インターネット予約などの環境整備が重視されている。

 また、政府の経済財政運営の指針となる「骨太の方針2009」(6月23日閣議決定)にも、成長戦略の1つとして「世界に誇る観光大国実現(2020年までに訪日外国人旅行者2千万人へ)」が盛り込まれた。主な施策としては外国語対応の強化などが挙げられている。

幅広い視点から 支援策の議論も
 国際観光ホテル整備法は1949(昭和24)年の制定。登録施設に税制上の優遇措置などを適用し、外客受け入れに向けた施設整備、接遇向上を促進してきた。しかし、ビジット・ジャパン・キャンペーンなどで外客数が大幅に増えるなど情勢は大きく変化。登録施設以外にも多様な形態の宿泊施設が外客受け入れに重要な役割を果たすようになっている。

 他方、社会経済情勢の変化で登録施設に対する支援措置などは縮小されてきた。減価償却資産の耐用年数の特例措置は97年3月に廃止。04年3月の法改正では行政改革の一環で登録機関の位置づけが変わり、「政府登録」を名乗れなくなった。固定資産税の軽減措置は継続中だが、実際の適用は登録施設の所在市町村521のうち約半数の274という状況だ。

 宿泊産業が現在直面している経営状況、訪日市場の動向などを踏まえた、2千万人実現への宿泊業に対する制度や施策が求められている。観光庁観光産業課の輕部努課長補佐は「現在約3千の登録旅館・ホテルがあるが、その施設だけでは2千万人時代には対応できない。支援策のあり方を含めて幅広い視点から検討していく必要がある」と話す。

 
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