観光庁は9日、誰もが気兼ねなく参加できる旅行「ユニバーサルツーリズム(UT)」「バリアフリー旅行」を考えるシンポジウムをオンラインで開いた。UTを受け入れる全国の観光協会など5団体がそれぞれの取り組み事例を報告。識者らがUTの普及に向けてそれぞれの立場から提言した。
観光庁が2020年度にバリアフリー旅行のサポート体制を強化したい観光団体などを支援する実証事業を実施。今回、同事業に採択された5団体が事例を発表した。
小野川温泉観光知実行委員会(山形県)は、温泉街の旅館6軒について、車椅子の通行も含めた館内動線を収録した動画を動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開。旅館のバリアフリー情報や動画を見られるQRコードを掲載したチラシも作成した。
事業採択に関わった跡見学園女子大学兼任講師の山崎まゆみ氏は「体の不自由な人が欲しい情報は一般的にあまり公開されていない。6軒の内部を公開した今回の取り組みは(UTを促進する上で)大きな前進だ」と評価。亜細亜大学准教授の久保田美穂子氏は「観光地が面として取り組まなければならない問題」と、地域ぐるみでUTの受け入れ体制を整備する必要性を強調した。
国立民族学博物館准教授で、自らが視覚障害を持つ広瀬浩二郎氏、車椅子で世界を旅行する「車椅子トラベラー」の三代達也氏、旅行会社でUTの造成に関わった渕山知弘氏らを交えたトークセッションでは、事前の情報発信とともに、現地における旅行者とのコミュニケーションが受け入れ側に必要と説いた。