地域DMOの一般社団法人ツーリズムいすみ(千葉県いすみ市、代表理事・出口幸弘いすみ市商工会長)は、旧夷隅町地区で、白ナンバーの自家用車を使った有料運送サービス(自家用有償旅客運送)を始めた。タクシー会社の廃業に伴う住民や観光客の“足”を確保するのが目的で、ツーリズムいすみは「DMOが地域交通の提供主体となるのは、全国的に見ても先進的な事例」という。
ツーリズムいすみのワゴン車1台を使い、いすみ鉄道国吉駅を中心に依頼に応じてサービスを提供する。料金は初乗り1.27キロ320円、以後272メートルごとに60円加算する。迎車料金は180円。「タクシー運賃のおおむね6割程度」と割安に設定した。
当面、試運転期間と位置づけ、土・日・祝日の午前9時から午後5時まで運行する。対象は観光客と地元住民で予約はラインや電話で受け付ける。運転手はツーリズムいすみのスタッフや地元住民が担い、運送料金から一定の割合を歩合制で払う。安定的な運行を確保するため、運転手兼観光ガイドを募集する。
国吉駅前で営業していたタクシー会社が廃業した後、足の確保が悩みの種となっていた。菜の花や桜の時期には多くの観光客が訪れていたが、休日のバスやタクシーの交通手段がないため「特に首都圏から電車で来る観光客にとって足がなく、気軽に訪れるのが困難な状況になっていた」という。
市が運営するデマンド交通(乗合タクシー)は平日のみの運行で、住民からも土・日の移動手段を求める声が上がっていた。
自家用有償旅客運送は、タクシーやバスの事業が成り立たない地域で交通手段の確保が必要な場合に、市町村やNPO法人が運行主体となる輸送サービス。
昨年11月の道路運送法改正で、バス・タクシー事業者が運行管理、車両整備で協力する「事業者協力型自家用有償旅客運送制度」が創設され、自家用車を使った輸送サービスが地元住民だけでなく、観光客を含む来訪者も対象として実施できるようになった。
ツーリズムいすみはこの制度を活用。地元の浪花タクシーが運行管理や車両整備に協力する。制度の運用は関東初で「地域DMOが自ら自家用有償旅客運送の実施主体となるのは全国的に珍しい事例」としている。
有料運送サービスに使用するツーリズムいすみの車両