観光を通じた豊かな社会の実現を 公益財団法人日本交通公社 観光研究部主任研究員 後藤伸一氏


公益財団法人日本交通公社 観光研究部主任研究員 後藤伸一氏

旅(観光)のチカラ(価値)を信じて日本を真の観光立国に

 旅(観光)にはチカラがある、そう、私は信じています。松尾芭蕉は「旅」を人生と例えました。古今東西、人は「旅」に憧れ、「旅」に恋をし、「旅」に出ることを夢見てきたのではないでしょうか。私自身、17歳でバックパッカーとなり世界を旅し、そのチカラを実感した一人でもあります。今、世界は大きく変わり、コロナ禍で人々が旅に出られなくなったことで、そのチカラ(価値)は見つめ直され、さらにチカラ(価値)が高まってきている、そう、私は思っています。

 公益財団法人日本交通公社は、「観光文化の振興」を目的として、「観光を通じた豊かな社会の実現」に貢献することを願い、日々調査研究に取り組んでおります。私どもの研究成果を多くの自治体やDMO、また、観光関連事業者の皆さまに共有し、旅のチカラを最大化させていくことが私どもの使命であり、研究員一人一人、また私にとっても大きなやりがいです。

 例を挙げると約10年前、2013年に私どもの機関誌「観光文化(216号)」にて「指標を活用した持続可能な観光地の管理・運営~世界の動向と国内での適用に向けて~」と題した特集を企画するなど、一早くサステナブルツーリズムを研究し情報として発信してきました。他にも宿泊税の導入に代表される観光財源や温泉まちづくり、オーバーツーリズム等について機関誌やセミナーで研究成果を発表してきました。一緒に調査研究に取り組んでいただいた自治体やDMO、また、観光関連事業者の皆さまには感謝の気持ちをお伝えしたいです。

 最後に私の好きな「旅のチカラ」を一つ紹介したいと思います。それは、地域の「自然環境」「生活文化」を守り輝かせるチカラです。環境省の国立公園満喫プロジェクトにおける保護と活用、文化庁の日本遺産における保存と活用などはまさにその一例だと思います。少子高齢化が進む日本で、観光を「手段」と捉え、そのチカラを活用することで自然遺産や文化遺産を持続可能なものにしていく。これは、保護、保存、継承が難しい過疎地域の貴重な遺産を、地域の皆さまだけでなく観光客も一体となって未来の子供たちに襷(たすき)をつなぐ素晴らしい取り組みとも言えます。そして、世界中のあらゆる人々が参加すればもっともっと楽しくなると思います。

 観光立国の定義はそれぞれありますが、私は観光文化の研究を通して、多文化共生型の日本らしい笑顔あふれる観光立国の姿を夢見ます。旅のチカラを信じ、自治体やDMO、また、観光関連事業者の皆さまと共に、夢をかなえていきたいと思います。

 

 

 
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