脱炭素でスマートな旅館 国際観光施設協会エコ・小委員会 42 コストダウンと脱炭素の切り札・地中熱 その1


 1月6日号掲載の小欄連載の41回目に、エコ・小委員会の佐々山茂委員長が、和倉温泉2軒の旅館の簡易診断とセミナーを開催したことを書かれた。小職は、余剰再エネ電力を利用したヒートポンプ給湯と貯湯のことを中心に、急きょ、地中熱にも触れてセミナーで話した。

 わが国は、太陽光や風力等の再エネ電力(電気)が急増している。ところが発電時に二酸化炭素を排出しない再エネ電力は、お天気任せで発電出力が不安定なことから、使われずに棄てられている時間帯があり、”行き場のない太陽光発電”とやゆされることもある。再エネ電力は、発電量が不安定なことから、変動性再生可能エネルギー(VRE)とも呼ばれる。

 これまで宿泊施設の給湯熱源には、重油や灯油などの化石燃料を使うことが多かった。再エネ電力が増えることから、自動車であればガソリン車や軽油のディーゼル車から、電気自動車とかプラグインハイブリッド車にシフトしようとしている。電気自動車への転換は理解しやすいが、給湯や暖冷房の熱源を電気に移行させる発想に至らない方が多いように感じる。

 再エネ電力を上手に活用することにより、これまで海外に流れていた原油や石炭等の輸入費用を国内にとどめることができる。この再エネ電力を上手に使って給湯をする話は、後の連載で詳しく解説したい。

 昨年11月の和倉温泉での簡易診断の中で、暖冷房のヒートポンプエアコンが塩害や風雪の影響があり、苦労されているとお聞きした。和倉温泉は海に面していることから、耐塩仕様のエアコン屋外機を導入しても何年間で劣化してしまい、交換が必要になるとのことである。また、定期的に屋外機のフィン(熱交換器)に付着した塩分を洗浄されているそうだが、養生に時間を要して手間が掛かり、電気系統に水が入らないようにしないといけないことから気を遣うとも仰っておられた。

 さらに、雪が降ると屋外機のフィンに雪や氷が付着して、暖房効率が低下することから、「寒い!」とクレームが入るとも聞かされた。宿泊施設の客室は、エアコンの屋内機が1台のみということが多く、塩害や風雪の影響による効率低下が如実に表れるようだ。

 これを解決する手段に、地中熱ヒートポンプがある。10メートル以深の地中温度は、図の通り年間を通してあまり変わらない。井戸水が夏は冷たく、冬は温かく感じるのは、井戸の水温変化が少ないことが要因である。

 地中熱ヒートポンプの導入費用は高いが、ランニングコストが安く、カーボンニュートラルにも大きく寄与する。環境省や自治体等の補助金も用意されているので、次回以降も地中熱について述べる。

 (国際観光施設協会エコ・小委員会委員、東北文化学園大学客員教授、元・福島大学特任教授 赤井仁志)


(観光経済新聞2025年1月27日号連載コラム)
     

 
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