緊急事態宣言下の旅館の現状 全国50軒の声

  • 2021年2月1日

 観光経済新聞社は18~26日、全国の主な旅館約50軒に、緊急事態宣言下の宿の現状と今後の対応を取材した。キャンセルの増加や新規予約の減少で2月7日までの宣言期間中、全ての日にちで営業休止に踏み切ったり、平日を中心に休館日を設けたりする旅館が多い中、施設の改修やオペレーションの改革など、通常業務に余裕ができた「今しかできない」業務に腐心する宿も目立つ。

 「昨年同時期よりもひどい状況。2月は特に厳しく、休業に踏み切る施設も出てきている」。東北地方のA旅館の女将は先行きに危機感を強める。

 政府の「Go Toトラベルキャンペーン」の一時停止に加え、それに沿って県が一連の観光支援事業を中止したのが響いている。近隣の県では支援策を続けるところもあるだけに、対応の差に疑問を投げかける。

 「旅館・ホテルは感染者の受け入れ先としての役割も求められている。(中止で)休廃業の施設が増えれば県民にとっても打撃ではないのか。先を見据えた対応が必要だ」と指摘する。

 雄大な富士山を間近に見ることができる中部地方のB旅館。「1月12日から日にちを決めて営業しており、お客さまが少ない場合は休館にする」と話す。ただ、「法事の後に使いたい」「記念日なので利用したい」など、強い要望があれば極力対応する。

 雇用調整助成金で何とかしのいでいるが、コロナ禍は経営に重くのしかかり「晴れ晴れとした気持ちになれない」と肩を落とす。

 Go Toトラベルキャンペーンで一息ついたこともあり、一時停止は「痛い」。国の緊急事態宣言が終わる2月7日以降に再開されることを期待するが、「今の状況ではどうか」と不安は消えない。

 「Go Toがなくなった時点でキャンセルがひどく、予約の6割がキャンセル。緊急事態宣言を受けて、県独自の施策、県民割もストップになり、宿泊客がさらに減少した」とは東北地方のC旅館。この時期は例年、閑散期であるものの、かつてない状況が続いているという。

 今後について「コロナ禍が収束して、安全、安心に旅行できるという状況にならないと人は動かない。今は社員の意識を低下させないように努めている」状況だ。

 中四国地方のD旅館は緊急事態宣言の発令後も予約の残り具合によって営業し、完全な休業にはしていない。「一定以上の稼働がないと営業していても厳しいが、キャンセルせずに来ていただけるお客さまには対応している」。感染の収束状況を見ながらだが、2月は平日を休業にすることも考えているという。

 「Go Toトラベルで9~11月はひとまず好調だったので、資金繰りなどは心配ないが、再びの緊急事態宣言で気持ちの面でつらい。打つ手といってもエレベーターを止めて経費を抑えるとか、出血を止めることぐらい。温泉街も休業の施設が目立つ。感染が落ち着いた際には、自治体による県民割やGo Toトラベルで需要の回復に向けた弾みを期待したい」。

 九州地方のE旅館。「打つ手はない状態だが、1組、2組でも入っている場合はそのお客さまを大事にし、休館にせずに受け入れている。お客さまがいないときは休館にしている」。

 年末の30、31日は半分の客室が埋まったというが、年始からは「さっぱり」。以前からインバウンドを受け入れていなかった同館。「今後についてはまだ手付かずだが、国内専門の方針にのっとり、国内旅行に目を向けられている機会を生かして集客拡大をどうにか図る」。

 東海地方のF旅館は「緊急事態宣言が発出されたが、当県はまだ警戒レベルでとどまっているので営業は継続している」状況。宿泊以外のプライベートブランド食品の販売で売り上げの欠損分の補填(ほてん)を目指している。

 「新年度に向けて、新商品の企画立案、商品造成をすべき時期だが、緊急事態宣言下ではパンフレットの発注なども含めて一切動きだすことができない」と苦しい胸の内を明かす。

 今後に向けては「Go Toが続く場合、続かない場合の両方を想定して、新年度に向けての商品プランを練っている。緊急事態宣言明けとともに積極的に動けるよう、態勢を整えている」。さらに「今まで口頭伝承が中心だった接客サービスの教育に関して、通常業務に余裕が出た今こそマニュアル化し、シェアしていきたい」と今後を見据えて語る。

 通常業務に余裕がある「今だからこそできる業務」に取り組む宿は多い。関東地方のG旅館は、ラウンジや食事どころのリニューアルをこの時期を利用して進めており、夏ごろのオープンを目指している。同館は団体から個人、そして近隣住民の利用を視野に、地元紙や地元放送局への広告出稿にも力を入れるという。

 全館休業に踏み切った中部地方のH旅館も館内のリフォームに取り組む。「今までインバウンドが多かったが、今後は国内、マイクロツーリズムに力を入れていきたい。隣の首都圏の人に安心して来てもらえるような取り組みを行いたい」。

 東海地方のG旅館は館内のオペレーション改革に取り組む。「コロナ前より少ないスタッフで対応できる新たなオペレーションなど、評判と効率を両立できる形を探っている」。

   ◇   ◇

 取材した旅館から、ほかにもさまざまな声が上がった。以下にその要旨。

 「お客さまが少なく、また従業員の感染を防ぐため、21日から2月7日まで休館する。宣言が終わり、Go Toトラベルキャンペーンが再開しないと先行きは厳しい。雇用調整助成金で雇用を守っているが、(助成金の)上限の撤廃や期間延長をしてほしい」

 「キャンセルが多く、取り消し尽くされた。唯一、高額な露天風呂付き客室のみ売れている。今は政府へのキャンセル補償に対する申請作業で忙しい。予約が入ってこず、今は何も考えられない」

 「Go Toの停止で予約のほとんどがキャンセル。2月は金、土曜日しか営業しない。雇用調整助成金を活用。必要最低限の社員で営業している。Go Toが再開したら、まずは県内のお客さまから攻めて、その後、全国に広げていきたい」

 「宿泊は1日数件。2月7日まで人は動かないだろう。今は打つ手なし。耐えるしかない」

 「2月10日までの臨時休業を決めた。緊急事態宣言の発令で予約はほとんどがキャンセル。旅行の自粛で新規予約がなくなり、営業を続けていても経営的に厳しい。地域を挙げたPRやGo Toトラベルキャンペーンで10、11月は前年を上回る実績で人手が足りないほどだったが、状況が大きく変わってしまった。ワクチンの普及などに期待しているが、お客さまが動きだすまでは耐え忍ぶしかない」

 「2月7日までの期間、平日を臨時休業にし、土曜日の宿泊のみ営業している。営業日も予約の入りは厳しい。宣言明けやGo Toトラベルの再開を見据えて団体より個人とか、いろいろ考えてはいるが、やはり感染が収束しないことにはどうにもならない」

 「ユーチューブ、フェイスブック、ラインを使った告知を開始。まだ予約につながっていないが、訪問販売ができないので、今はできることを。休館せずに営業しているが、予約が入っていない。納入業者など取引先にも迷惑を掛けている」

 「地元の農家や納入業者と連携し、特産品を販売。売店で売っているものを宴会場でも販売した」

 「2月7日まで休館。12月の半ば以降、キャンセルが続出し、その対応で忙殺された。今後は感染症対策の維持、徹底を図るとともに、Go Toを機に若いお客さまが多く利用してくれたので、リピーターになってもらえるよう努める」

 「Go Toが停止になり、キャンセルがだいぶ出ているが、辛抱して営業している。1月の売り上げは『目指せ(前年の)半分』。2月も厳しいが、盛り返していかねばならない。地元向けにDMを打つほか、ガイドラインに沿ったコロナ対策をしっかり行うことだ」   
 

 
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