政府は2016年度内に観光立国推進基本計画を改定する方針だが、経団連は13日、改定計画に対する提言を発表した。提言は、「国内外の観光需要を取り込み、国・地域の成長につなげていくには高いレベルの観光の質を追求すべき」だとし、その際、(1)稼ぐ力の発揮(2)先端技術の積極的導入(3)地域主導による自立的成長―の三つの視点が必要と主張。そのためには観光庁が司令塔機能を発揮できるよう「将来的に省へ格上げすることも検討に値する」との考えを示した。
三つの視点のうち、先端技術の導入ではAI(人口知能)、ロボット、IoTなどの積極的な活用を求めた。これにより、「深刻な労働力不足に対応すると同時に、さらなるイノベーションを創出し、他国の観光地と競争していくことが可能になる」とした。また、地域主導による自立的成長では、地方分権や財源移譲などを一層推進しなければならないと指摘。
改定計画を実施するには「観光庁の人員・予算などを含めた体制を強化し、複数省庁にまたがる政策の一本化、計画の推進に必要な他省庁への働きかけ、進捗・達成状況のレビューとフォローアップの実行といった指令的機能を発揮していく必要がある」として、観光庁の省への格上げに言及した。
政府は20年に訪日外国人4千万人、30年に6千万人とする目標を掲げる。提言はこの数値目標を実現させるには国・地域別、訪日目的別などのセグメントに分け、それに基づく目標を設定する必要があるとしている。
具体的な政策では、(1)民泊の推進と旅館業法の規制緩和(2)日本版DMOの形成支援(3)東北など被災地おける観光振興(4)免税制度の簡素化・電子化(5)パスポート取得費用の軽減―などを求めた。
(1)については、農村や古民家などにおける民泊は「重要な観光資源であり、宿泊施設の需給がひっ迫している地域における代替手段になり得る」としたうえで、「ルールを設け、その遵守を徹底すべき」と主張。さらに、「将来的には旅館業法への一本化も考慮する」とし、「現行の旅館業法についても、先端技術の導入も見据え、フロントの設置義務、ロビーの面積制限などの規制を緩和・撤廃する必要がある」との考えを示した。
(2)では、「良質なモデル的DMOの設立を集中的に支援すべき」と選択と集中の必要性を説き、「観光資源への入場料、旅行商品や地場産品の販売、ファンドの運営をはじめ、地域の判断に基づき、自ら稼ぐ仕組みを構築する」よう求めた。
さらに、(3)では震災地域の復興が遅れている現状から、「今も爪痕が残る沿岸地域は震災の記憶風化に貢献する高い教育効果も有しており、東北にしかない教育観光資源として整備することも一案」としたうえで、被災地については「一定期間、観光地の再生を国として支援することが望ましい」と提言した。