立教大学はこのほど、法務大臣の認証を受けて観光に関するさまざまなトラブルを解決する「立教大学観光ADRセンター」を開設した。宿泊や旅行に関するトラブルの相談を事業者や消費者から受け付け、同大学の法律と観光の専門家らが公正な解決策を見いだす。観光の領域に特化したこのような取り組みは日本初という。
同センター(センター長=川添利賢・立教大学法務研究科教授、弁護士)は、立教大学法務研究科(法科大学院)に附属する法曹実務研究所と、観光の実践的研究に実績がある立教大学観光研究所を母体に、昨年4月に開設。今年2月、法務大臣から認証紛争解決事業者の認証を受けたことで、事業を本格的にスタートさせた。
ADR(Alternative Dispute Resolution)とは、民事の法的紛争を裁判以外の手段で解決する方法。第三者の調整により、当事者同士が解決内容を合意する「調停」と、当事者が解決内容を第三者の判断に委ねる「仲裁」などがあるが、今回、同センターが行うのは「調停」になる。
「観光に関するトラブルは日常的に多く発生しているはずだが、金額が軽微なことが多いこともあり、ほとんどの場合、正式な法的手段によらず、“泣き寝入り”や“ゴネ得”で片付けられているのが現状ではないか」(同大学)。
センターは、これら観光にかかわるトラブルを中立的な立場で検証。担当する同大学法務研究科と観光学部の教員、弁護士らによる調停人が、それぞれの専門性を駆使し、公正な解決策を見いだす。要員は川添センター長をはじめとする12人。
調停の対象となるのは、旅行契約や宿泊契約から生じる様々なトラブル。具体的には(1)取消料に関する紛争(2)予約の齟齬(そご)に関する紛争(3)旅行の手配に関する紛争(4)添乗員、現地ガイドに関する紛争(5)サービスの表示に関する紛争(6)旅館・ホテルのサービスに関する紛争(7)土産物に関する紛争(8)旅行先での負傷、発病に関する紛争──など。
旅館・ホテルや旅行会社など観光関係事業者と消費者との間のトラブルが対象。事業者、消費者双方から相談を受け付ける。ただ、事業者同士のトラブルは対象としない。
受け付けた相談は後日、弁護士が電話または面談で確認。調停になじむ案件であれば、調停申し立てを行ってもらう。申し立て費用は税込み5250円。相談のみは無料となる。
時間と金がかかりすぎるといわれる裁判に変わる紛争解決の手法として、多くの需要が見込まれている。
センターでは、直面するトラブルの解決とともに、観光にかかわる解決の事例を積み重ね、「この領域で、適正な法的スタンダードを打ち立てたい」としている。
同センターはTEL03・3985・4650。受け付け時間は月曜から金曜までの午前10時から正午、午後1時から午後5時。
「ADRセンター」を開設した立教大学