立教大学観光研究所は23日、公開シンポジウム「イノベーションを担う観光人材をどう育てるか」を東京・池袋の同大キャンパスで開いた。
地域の視点から組織的に観光地を革新する「観光地経営専門家」を育成することを目的に、経済産業省の08年度委託事業で2年間かけて開発した「観光地経営専門家育成プログラム」がこのほど完成。9月末から12月末の土・日、8日間を使って社会人と大学院生向けに開講するこけら落としの意味も含めて実施した。
城福健陽・経産省商務情報政策局参事官(観光・集客チーム)は「政府は観光を少子高齢化時代の成長戦略の切り札と位置づけている。経産省も観光庁と連携しながら取り組んでいく」とあいさつ。また和田浩一・観光庁観光資源課長は「観光地域づくりの人材育成に関するガイドラインを立教大学の協力で作成中。近々に発表する」と述べた。
基調講演では、NPOハットウ・オンパク代表理事で別府温泉ホテルニューツルタ社長の鶴田浩一郎氏が「別府ハットウ・オンパクのイノベーション」を、由布院観光協会会長で由布院玉の湯社長の桑野和泉氏が「人材から見た由布院の観光まちづくり」をそれぞれ講じた。
JTB常務で立教大学観光学部教授の清水愼一氏がコーディネートしたパネルディスカッションでは、「地域社会には既存のヘゲモニー(覇権)が根付いていて、変革するには膨大なエネルギーが必要。自分で意思決定できる新組織を立ち上げた方が近道の場合もある」といったイノベーションの本質に関わる鋭い指摘も出た。さらに「世代間がつながっていることが重要。40代、50代、60代がつながっていれば、40代が飛びはねても上がフォローしてくれる」(鶴田氏)、「女性は人を育てるのに向いている。また世代と世代、人と人の『結び目』の役割を担うことが出来る」(桑野氏)などの意見が交わされた。
パネルディスカッションの様子