温泉旅館からの排水に含まれるホウ素やフッ素の暫定排水基準の見直し期限が来年6月に迫り、除去するための排水処理技術の確立が急務となっているが、環境省は16日、温泉旅館への導入を視野に入れた実証試験を実施することを決めた。民間企業などから技術を募集し、審査の上、選定する。
ホウ素やフッ素は国内の大半の温泉に含まれている。水質汚濁防止法の規制物質にも指定されているが、その排水処理技術については、低コスト・省スペースで、温泉事業者が導入可能なものは確立していない。
同省は、「実用化の段階にある新しい排水処理技術を民間企業などから広く公募し、応募のあった技術について厳正な審査を行った後、調査に採択する技術を選定する」(水環境課)考え。審査は学術経験者により構成する「温泉排水処理技術開発普及等調査委員会」が行う。
選定次第、その技術を用いた調査計画を作り、排水中のホウ素、フッ素濃度が高い温泉旅館で実証試験を行う。結果をもとに技術の有効性、経済性を評価する。
温泉を利用する旅館業の場合、規制が緩やかな暫定基準(ホウ素は1リットル当たり500ミリグラム、フッ素は同15〜50ミリグラム)の対象業種となっているが、暫定基準の再延長が認められなければ、来年7月以降は一律基準(ホウ素は同10ミリグラム以下、フッ素は同8ミリグラム以下)が適用されることになる。
旅館側はこれまで排水処理装置の導入に多額の費用負担がかかることから「暫定基準が撤廃されれば、廃業に追い込まれかねない」として、暫定基準の延長を求めてきた経緯がある。
実証試験の結果が待たれるが、同省が試験に踏み切る方針を決めたことは、うがった見方をするならば「暫定基準をこれ以上延長しない」という意思表示ととれなくもない。
なりを潜めていた感のあるホウ素、フッ素問題だが、基準見直しまでに1年を切り、関係者に残された時間はそう多くない。来年7月を見据えた対応が求められているといえそうだ。