環境省、条件付きで垂直掘り容認、地熱発電開発加速か?


 環境省は21日、国立・国定公園内での地熱開発の取り扱いについて、地域での合意形成などの条件付きで第2種、第3種特別地域での垂直掘削や設備の設置などを認める方針を固めた。開発が予想されている周辺地域の温泉事業者などからは大規模開発推進への懸念が高まりそうだ。

 第2種、第3種特別地域については、原則として地熱開発を認めないとしたものの、(1)掘削や地熱開発事業者と地方自治体、地域住民、自然保護団体、温泉事業者などの関係者との地域における合意の形成(2)自然環境、景観および公園利用への影響を最小限にとどめるための技術や手法の投入、造園や植生等の専門家の活用(3)地熱開発の実施に際しての、周辺の荒廃地の緑化や廃屋の撤去などのミティゲーション、温泉事業者への熱水供給など、地域への貢献(4)長期にわたるモニタリングと、地域に対する情報の開示、共有──について取り組みが行われている事例については、特別地域内からの垂直掘削や地域内への設備設置を個別に検討する。また自然環境への保全などに影響がないとされる場合の傾斜掘削による開発については、個別に判断して認める方針とした。

 普通地域については風景の保護上支障がないものについては認める。

 このほか小規模な開発で風致景観への影響が少ないものや既存温泉水を使うバイナリー発電などで、開発エリア周辺のエネルギーの地産地消を目的とした開発については、自然環境の保全や公園利用への支障がないとされるものは普通地域、第2、第3特別地域でも認める方針だ。

 最も保護レベルの高い特別保護地域、それに準ずる第1種特別地域では傾斜掘削による地下利用も認めないとしたものの、地熱資源の状況把握のための調査については個別に判断することとした。

 これに伴い、1974年、1994年に発出した、国立・国定公園内での地熱発電事業の許可に関する通知は廃止する。

 環境省では2月まで、国立・国定公園内での地熱開発についての検討会を開き、第2種、第3種、普通地域への傾斜掘削を認める方向としてきたが、傾斜掘削の場合の掘削費用の増大などへの懸念から、垂直掘削も認める形となった。

 今回の方針決定について、地熱資源の有望地域とされる福島、山形両県にまたがるエリアの、地熱開発と温泉保護についての対策の検討などを行っている「磐梯・吾妻・安達太良地熱開発対策委員会」の遠藤淳一委員長(福島・高湯温泉、吾妻屋社長)は、「国のガイドラインや通知というものは、『交通整理』が目的のはず。しかし国が開発側の立場に立ち、一方通行のまま話が進んでしまっている」と指摘。第2種、第3種地域での地熱開発の条件については、開発事業者と地域自治体や住民の間での合意形成や、長期モニタリングと情報開示が盛り込まれたことに一定の評価をする一方で、「長期モニタリングを行っても、事業者側の一方的なデータでは全く意味がない。さまざまな立場の第3者機関などによるモニタリングの必要性、正しい情報の開示をこれからも訴えて行く必要がある」と語った。

 
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