環境省主催の第5回全国温泉地サミット(全国温泉地自治体首長会議)が2日にオンラインで開かれ、ライブ配信された。温泉地の自治体の首長らが登壇し、新型コロナウイルスの流行を踏まえ、関係人口の拡大を目指した温泉地でのワーケーションの推進、温泉が持つ健康増進への効果などを重視した温泉地のブランディングなどについて取り組み事例を紹介した。
長湯温泉などを持つ大分県竹田市の首藤勝次市長は、「New Normal時代に求められる温泉地ブランディング」と題して発表。コロナ禍の影響を受ける中にあっても、「世界に通用する個性的な温泉地づくりが何より大事。一時期のブームに終わらせない取り組みにすることが必要だ」と指摘した。
「日本一の炭酸泉」とも称される竹田市の「温泉力」を重視した施策を紹介。市全域が国民保養温泉地で、温泉療法を体験する宿泊者の費用の一部を助成する温泉療養保健システムを整備。2015年には第8回ヘルスツーリズム大賞を受賞した。御前湯、B&G体育館、クアパーク長湯を温泉利用型健康増進施設として活用する。
今後の取り組みでは、「温泉とスポーツによる健康づくりシステム」として、健康経営を掲げる企業へのアプローチ▽社員の福利厚生を充実させたい企業との連携▽テレワーク滞在者向けのエビデンス調査実施―などを挙げた。
嬉野温泉がある佐賀県嬉野市の村上大祐市長は、「湯ったりワーケーションのススメ」として発表。今年3月、ウェブサイトの制作などを手掛けるイノベーションパートナーズ(本社・東京都港区)と協定を結び、温泉旅館の1室をオフィスとして活用してもらう取り組みを始めたことなどを紹介した。
温泉などの地域資源を生かした「うれしの流ワーケーション」として、交流人口の拡大、移住・定住の機会創出を目指す。村上市長は「ワークスポットの充実、地域での消費を促すインセンティブなどを含めたおもてなしの態勢整備が課題だが、大事なのは地元とのつながり。地域とのかかわりが嬉野で仕事をする必然を生む」と述べた。
伊香保温泉で知られる群馬県渋川市の高木勉市長は、「ワーケーションの受入環境整備への取り組み」として、宿泊施設を対象とした費用補助事業のほか、空き物件などのサテライトオフィスへの改修費などの支援事業を紹介した。
ポスト・コロナの伊香保温泉の活性化に向けては、平日の温泉地でのワーケーション「温泉Biz」の推進▽長期宿泊滞在の拡大による関係人口の創出▽地元の食材を活用したベジタリアン、ヴィーガンのモデルメニュー開発など、インバウンドの受け入れ環境整備―を課題に挙げた。
雲仙温泉などがある長崎県雲仙市の加藤雅寛観光商工部理事は、ワーケーション誘致の狙い、今後の計画などを説明。温泉をはじめ農業、自然、文化などの資源は豊かだが、人口減少への不安に加えてコロナ禍の経済への影響も深刻。観光産業と他産業の連携も課題という。
ワーケーションなどを通じた地域内外の人の交流を創出し、雲仙ファンづくりから移住定住、多拠点居住なども含めた関係交流人口の増やすことで、「オープンイノベーション」による雲仙市の地域課題の解決につなげる。
全国温泉地サミットの前後には、温泉地活性化に向けた団体、企業、自治体などのネットワークづくりを目指す「チーム新・湯治」の第2回全国大会、温泉熱の有効活用促進セミナーもオンラインで開催された。