環境省、「国立公園オフィシャルパートナーシッププログラム」の第2回意見交換会を実施


 環境省は4日、「国立公園オフィシャルパートナーシッププログラム」の第2回意見交換会を実施した。

環境省では、「明日の日本を支える観光ビジョン」に基づき「国立公園満喫プロジェクト」を推進し、日本の国立公園の世界水準化を目標に、公園資源の活用、国内外の利用者の滞在環境向上、持続可能な取り組み、上質なツーリズムを体験できる憧れの目的地とするべく、官民一体となってさまざまな取り組みを行っています。その取り組みのひとつとして、国立公園オフィシャルパートナーシッププログラムに参画している企業との連携を推進しています。当連携を推進するため、2021年3月4日(木)、環境省主催の国立公園オフィシャルパートナー企業との第2回意見交換会を開催しました。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策として、前回(2020年12月21日開催の第1回意見交換会)同様、オンラインミーティング形式にて実施いたしました。

<「国立公園満喫プロジェクト」URL>
http://www.env.go.jp/nature/mankitsu-project/

■「国立公園満喫プロジェクト」趣旨
環境省では、政府が2016年3月に取りまとめた「明日の日本を支える観光ビジョン」の柱の一つとして、国立公園を観光資源として活用していくことが掲げられたことを受け、世界水準の「ナショナルパーク」を目指し「国立公園満喫プロジェクト」を推進しており、国立公園の保護と利用の好循環により、優れた自然を守り地域活性化を図ることを目指しています。このプロジェクトの一環として、民間事業者等と連携することでより国内外からの国立公園利用者の増加と国立公園の所在する地域の活性化を図るべく、「国立公園オフィシャルパートナーシッププログラム」を2016年より開始し、現在(2021年3月時点)、105の企業や団体が環境省と国立公園オフィシャルパートナーシップを締結しています。

<第2回意見交換会レポート>
■開会挨拶
環境省 自然環境局 国立公園課 国立公園利用推進室 室長 中島 尚子氏による挨拶

開会の挨拶として登壇した中島氏からは、「2016年から開始したこのプロジェクトも、現在84もの企業や団体さまとのパートナーシップを締結することができ、日々、国立公園の魅力の発信を進めております」とコメントがありました。第1回意見交換会で、新型コロナウイルスの感染拡大における社会全体の状況変化に触れた際、未曾有の事態の中でこそ、国立公園としての自然環境の魅力があらためて見直される時代になったと述べ、続く今回開催の第2回意見交換会においては、「オフィシャルパートナーのみなさまと、環境省の連携も含め、お互いの考え方について活発な意見交換、取り組みをさらに推進するためのきっかけにしてもらいたい」と、より具体的な取り組みへの期待を寄せた挨拶を行いました。

■マッチング進捗状況報告
国立公園オフィシャルパートナーシッププログラム事務局事務局から、今年度のオフィシャルパートナー企業と国立公園の担当者とのマッチング状況について報告を行いました。「コロナの影響もあり、今年度中の連携実現にまでいたらなかったケースもあります」と現状を報告しました。具体的な取組例として、阿寒摩周国立公園におけるワーケーション推進の事例、阿蘇くじゅう国立公園におけるエコツーリズムの推進、霧島錦江湾国立公園における交通機関によるプロモーション事例などを紹介しました。

■テーマ別グループトークにおける意見交換会
グループトークのテーマは、第1回意見交換会実施後の参加者アンケート回答を参考に、関心が特に高い結果となった取組事例や課題を中心に、以下の7つのテーマ(全12グループ)にて、それぞれ意見交換を行い、ディスカッション終了後、全員での内容共有のため各グループより意見交換の内容を報告いただきました。

1.「ワーケーション等国立公園の利活用」
2.「上質な滞在スタイルの提案」
3.「エコツーリズム商品の造成」
4.「キャンプ場の改善、グランピングの導入」
5.「国立公園のプロモーション手法」
6.「新しい生活様式における観光の開発」
7.「温泉地のさらなる開発」

1.    ワーケーション等国立公園の利活用
昨今需要の高まるワーケーションと国立公園の活用についてのテーマでは、ワーケーションにおける一般認知度や定義の曖昧さ解消における議論が交わされました。ワーケーションを実施するうえで、制約となる企業側の問題として、業務内容や職種による相性、仕事場を社外にすることに対する双方のセキュリティの懸念、スペックなどハードウェア環境による効率性といったニーズに対する課題を中心にディスカッションされました。また、同テーマの別グループでは、受入側の課題について話し合われ、高速Wi-Fi環境の整備、スペースの確保、地域住民の理解など、それぞれの地域が差別化していくための工夫やその必要性について意見が交わされ、国立公園との連携において、地域住民、環境省、企業の連携の幅を広めていくことへの重要性について提起されました。また、国立公園とワーケーションのポテンシャルを高く評価し、GoToトラベル需要の創出につながった事例が挙げられる一方で、発着それぞれの視点での課題とマッチングエラー解消に関するディスカッションが行われました。

2.    上質な滞在スタイルの提案
前回、同テーマでおこなわれたディスカッションでは、眺望が特徴的な宿泊事業者などが、コンテンツを活かした施設と交通網が整備されることで、滞在する利用者の満足度と滞在時間が向上するという認識が共有されました。第2回では、顧客ターゲット層によって上質の定義が異なることへの懸念をはじめ、かかるコストに対する安全性や感動体験といったコンテンツ部分の課題が挙げられ、“上質”が金額だけにならない選択肢の必要性や、目的地到着までの移動手段においてもその体験を楽しんでもらうことの重要性が提起されました。また、インバウンド向けの施策の一環として、現地のアクティビティに参加するネイチャーガイドが、双方向通話を可能とするイヤホンガイドなどハード的なものだけでなく、相手側が求める情報にガイドが気づける仕組みづくりについて、より上質な展開を目指した話し合いが行われました。

3.    エコツーリズム商品の造成
第1回意見交換会では「環境保全活動の商品化」というテーマで、山岳地帯の国立公園における携帯トイレの普及の問題点や実施取組例について紹介がなされましたが、第2回では課題として挙がった回収の問題など、普及方法における議論が交わされました。また、アウトドアブランドの商品における販売収益の一部を自然保護や保全活動にあてる企画の共有、国立公園側からは、コンテンツの質を確保するためのガイドラインの検討状況の紹介が行われました。ツアー造成においては、ガイドの熟練度が顧客満足につながる可能性が示唆され、国立公園ごとに異なる魅力やストーリーをそれぞれの視点で訴求していくことの重要性についてディスカッションされました。

4.    キャンプ場の改善、グランピングの導入
世間的にも需要が高まっている、キャンプ場、グランピングの導入におけるテーマでは、実際の取組例として、キャンプ場への木製コンテナの設置、スキー場などシーズナリティが強い観光地におけるオフシーズンの利活用、施設からの眺望などグランピングで来訪者が重要視する点や、施設のアピールポイントについて、参加メンバー間で幅広く意見交換が行われました。また、国立公園の利活用促進の一環として、強みである自然景観、地産地消の食、アクセスの手軽さなどのメリット部分の認識を広げることについて、見解の一致が見られました。また、同テーマの別グループでは、環境省が運営する直轄のキャンプ場の利活用促進について、民間のノウハウを取り込んで、ソーシャルメディアとの連携も行い、これまで以上に魅力的な活用を推進していくことについて、ディスカッションされました。

5.    国立公園のプロモーション手法
国立公園のプロモーション手法をテーマにしたグループでは、オフィシャルパートナー企業・団体数も105社となり、国立公園の認知度向上に向けたさらなる具体的な取組が期待され、国内のみならず、これから需要が戻ってくるであろうインバウンド向けのPRという観点で、ディスカッションが行われました。国立公園でどのような体験ができ、どういった感動を得られるのか、周辺の観光資源との組み合わせによる差別化の必要性など、ターゲティングとコンセプトづくりの課題とその解決策について、メーカーやメディアそれぞれのパートナー視点で意見が交わされ、環境省や国立公園のソーシャルメディアアカウントの活用など、周知方法における今後の協力体制や対応について、具体的な提案が話されました。また、同テーマの別グループでは、取組実例として、国立公園の関係者が提供する写真を用いたソーシャルメディアとの連携による海外向けPR、東南アジアの顧客をターゲットにしたオンラインツアーや商談会のほか、国内の定期観光バスの実施例が報告され、マイクロツーリズム需要にも応えられたと報告がありました。

6.    新しい生活様式における観光の開発
新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、各地で試行錯誤が行われている新しい生活様式を順守した観光スタイルにおいて、観光地側、流通側ともに安全・安心をテーマに感染防止対策を実施、推進している報告がなされる一方で、宿泊事業者の事例として、これまで販売数が伸びなかった部屋食プランや、露天風呂付き客室の需要増など、プライベート寄りの観光スタイルに変わってきていることの共有が行われました。また、都道府県ごとに状況が変化するなか、移動制限などが行われていた時期には、県内からの需要も高まったと、マイクロツーリズムの浸透についても共有されました。今後、観光地側、流通側、そして消費者側も感染拡大防止を順守できるよう、プロモーションを行うことへの重要性についてディスカッションされました。

7.    温泉地のさらなる開発
温泉大国日本の貴重な観光資源でもある温泉をテーマに、参加メンバー間では、地域のインフラ整備のほか、温泉地がその魅力をどのようにPRしていくべきか、ソフト面の開発について議論が行われました。国内外に積極的にアピールを行う方法として、メディアを活用したプロモーション事例や、混浴などの文化的価値を、海外の価値観として、ジェンダーフリーな空間という観点で押し出す施策など、インバウンド向けの温泉観光スタイルについて推進している実例が多々挙げられました。一方で、人気の温泉地であっても、同じ県内での知名度が低いというケースの問題点や知名度に寄らず泉質などの持ち味を活かす必要性についての考えも展開され、活発な意見交換がなされました。

■第2回意見交換会を終えて
第1回意見交換会では、新型コロナウイルス感染症の影響下、誰も経験したことのない未曾有の事態と、新たな日常がはじまるなか、感染リスクの低い自然の中で過ごすことへのニーズが高まり、改めて今だからこそ国立公園の魅力を伝え、呼びかけていくことの重要性を認識する時間となりました。今回の第2回意見交換会では、コロナ禍における国立公園の魅力の具体的な利活用方法の実例もグループトークでディスカッションされ、マイクロツーリズムの需要に応える動きや、アフターコロナを見据えたインバウンド向けの施策への取組など、未来を感じる前向きな思いを共有しあう会となりました。
7つのテーマで行われたグループトークでは、「他社の取組を聞くことで、今後の自社展開のヒントにもなった」、「前回よりも十分な意見交換をすることができて有意義に感じた」、「官民それぞれの立場において、コロナ禍での取組について真摯に対応していることを強く感じた」など、取組を推進している企業や模索している各社において直面している課題、また環境省との連携について、気づきや共有に繋がったとのコメントをいただきました。また、「企業同士の横のつながりが今後重要になっていくと考えている」、「今後は意見交換のみならず、現地での視察なども行いたい」、「連携できている企業の顔ぶれが同じにならないよう、105社のパートナーを活用してほしい」など、実際の取組を通じてオフィシャルパートナー同士の理解が深まったという意見のほか、今後の民間同士の連携やコミュニケーションの促進を期待する声も多く寄せられました。

■第1回意見交換会(2020年12月21日開催)について
第1回意見交換会では、「環境保全活動(生態調査等)の商品化」、「上質な滞在スタイル(ガイド、宿泊、食、交通等)の創出」、「キャンプ場の改善、グランピングの導入」、「ワーケーションの利用促進」、「そのほか、自由テーマ」それぞれ5つのテーマについて、グループディスカッションや実例紹介が実施され、自社が実践している取組の課題や解決策への気づき、他社事例を受けての取り組みの提案、地域に根差した協力関係の構築など、国立公園の利用促進や活性化について、議論が交わされました。

 

【「国立公園満喫プロジェクト」2021年以降の基本的な方針について】
<基本方針>
1.ウィズコロナ・ポストコロナの時代への対応~ワーケーション等~
・国内誘客の強化、地域内観光の受け皿として再構築
・ワーケーションなど国立公園の新しい利用価値を提供
・コロナ禍での安心、安全で快適に利用できる受入環境整備
・多様な利用者層をターゲットにしたコンテンツの充実、情報発信
・限定体験やキャパシティコントロールの推進による保護と利用の好循環
2.水平・垂直展開~8公園から全公園へ~
・現在8公園で進行しているプロジェクトを全34公園へ展開
・「世界水準のデスティネーション」のさらなる高みを目指す取組
・先行した8公園の継続的な取組と成果を活かした誘客
・国定公園、ロングトレイルの資源の活用、連携
3.これまでの基本的な視点の継続・重視
国立公園の魅力、地域の人々の暮らし、文化、歴史との共生、広域的な視点、サステナビリティなど。
これらの基本的な方針を軸として、自然を満喫できる上質なツーリズムの実現とブランド化を図り、新型コロナウイルスによる影響前の国内外利用者の復活など、複数の目標を掲げ、活動を継続していく予定です。

<「(概要)国立公園満喫プロジェクトの2021年以降の取組方針」 URL>
以下、参考資料1
http://www.env.go.jp/nature/2021/03/16/mat01-08.pdf

【国立公園オフィシャルパートナーシップ企業になるには】
環境省との国立公園オフィシャルパートナーシップの締結を希望する企業は、「国立公園オフィシャルパートナーシッププログラム実施規約」に則り、国立公園の魅力発信に係る取組案を作成し、環境大臣に提案することができます。取組案が、同規約に掲げる以下要件に該当すると認められるとき、パートナーシップを締結することができます。

●日本の国立公園の魅力を国内外に広く発信するものであること
●日本の国立公園の魅力を適切かつ効果的に伝えるものであること
●取組の内容が具体的であり、実現性が認められること

環境省「国立公園満喫プロジェクト」では、民間企業・団体のみなさまからの幅広い取組案を随時受け付けております。詳細は、公式Webサイトをご覧ください。
URL:http://www.env.go.jp/nature/mankitsu-project/

【国立公園オフィシャルパートナーシッププログラムについて】
環境省と企業又は団体が相互に協力し、日本が世界に誇る国立公園の美しい景観と、そこで体験することができる四季折々の眺望、国立公園に滞在する魅力を世界と日本に向けて発信することで、国内外の国立公園利用者の拡大と認知度向上を図り、人々の持続可能な環境保全活動への理解を深めるとともに、国立公園の所在する地域の活性化につなげるためのパートナーシッププログラムです。

<国立公園オフィシャルパートナーシッププログラム URL>
http://www.env.go.jp/nature/mankitsu-project/#partner

<「国立公園満喫プロジェクト」 URL>
http://www.env.go.jp/nature/mankitsu-project/

 
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