帝国データバンクによると、温泉旅館経営の宝の家(奈良県吉野町)は、9月28日に奈良地裁五條支部から破産手続き開始決定を受けた。
同社は、1929年7月創業、2014年4月に法人改組した老舗の旅館経営業者。「千本桜」で有名な吉野山にあり、「金峯山寺」まで徒歩8分の立地で、客室18室の温泉旅館「湯元 宝の家」を構え、一般の宿泊者のほか、多数の著名人を迎え入れていた。
しかし、今年に入り、毎年約30万人が訪れる吉野山の桜の時期に、新型コロナウイルス感染拡大の影響による外出自粛要請や緊急事態宣言が発令されたことから観光客が途絶えた。4月から5月にかけての繁忙期に休館を余儀なくされるなど、大幅な減収を強いられた。
その後、緊急事態宣言は解除され、6月から宿泊者を迎え入れていたが、新型コロナウイルス感染拡大前の水準にまで業績が回復する見込みは低いなどの判断から、8月31日に閉館し、今回の措置となった。
負債は債権者約20名に対して、約2億円。
奈良県企業における新型コロナウイルス関連倒産は3件目。