日本温泉協会(約1500会員)は6月23日、山梨県甲府市の常磐ホテルで会員総会を開いた。任期満了に伴う役員改選では新会長に廣川允彦副会長(松川屋那須高原ホテル)を選んだ。会長を4期(8年)務めた滝多賀男氏(水明館)は名誉会長に就いた。また、学術部委員長は綿抜邦彦氏(東大名誉教授)から山村順次氏(千葉大名誉教授)に交代した。来年度総会は長崎県雲仙市の雲仙温泉で開催する。
「無秩序な地熱開発に反対」「温泉で日本を元気に」「日本の温泉文化を守ろう」をスローガンに掲げた総会には約100人が出席。
冒頭、歓迎の辞を述べた宇野善昌副市長は「湯村温泉郷は開湯1200年の歴史を誇り、県庁所在地の町中に温泉があるのは鳥取市と甲府市だけだ」とアピール。また、昨年の「B—1グランプリ」でゴールドグランプリを受賞したご当地グルメ、甲府鳥もつ煮のおかげで観光客が増えたことを強調し、「温泉と共に甲府の魅力を堪能してほしい」と呼びかけた。
滝会長は東日本大震災の被災者に哀悼の意を表した上で、震災と福島第1原発事故で地熱開発が注目されていることに憂慮を表明。「無秩序な地熱開発には反対」としながらも、エネルギー環境が変化していることを踏まえ、「(地熱開発から温泉を守っていくには)地域の総意が必要」と、団結力で阻止すべきだと訴えた。また、温泉排水問題については「公共下水道が普及している。今後は自治体の関与を含めて、地域で集約した処理を考えることも必要だ」との認識を示した。
来賓の1人、環境省の大庭一夫自然環境整備担当参事官は国民保養温泉地について「昨年度から選定基準の見直しを進めており、(審議会の答申を得て)新しい基準を公表する」とした。
廣川新会長は「非常に重責を感じている」とやや緊張した面持ちで抱負を述べ、協会運営に当たり会員の協力を求めた。役員改選では、副会長に新たに山村、八木眞一郎(あわらの宿八木)の両氏が就いた。
総会では一般社団法人への移行、入会基準の変更などの議案を審議、了承した。今年度事業については(1)会員の拡充並びに事業の見直しによる財政の健全化(2)公益法人制度改革を踏まえた組織のあり方の検討(3)地熱関連の動向についての情報収集と対応──を重点目標に掲げ、ポイント制宿泊予約サイトとの連携事業の検討などに取り組む。
群馬・草津温泉の宮崎謹一常務理事(草津ハイランドホテル)が「温泉観光地の存続を脅かす無秩序な地熱エネルギー開発に断固反対」とする議題を提出した。また、竹村節子常務理事(旅行作家)が「日本を元気にするのは温泉から」をテーマに記念講演した。
廣川 允彦氏(ひろかわ・のぶひこ)慶大卒。松川屋那須高原ホテル専務、社長などを経て、05年4月から会長。03年6月から温泉協会副会長。国観連理事、栃木県観光協会会長など兼職。栃木県出身、73歳。