環境省は8月29日、横光克彦副大臣をヘッドとする「自然と調和した地熱開発に関する検討会議」の第5回会合を開き、日本温泉協会や日本自然保護協会などから意見を聴取した。温泉協会は「無秩序な地熱発電開発に反対」との立場を改めて主張し、無秩序な状況を回避するため、5項目を提案した。
同会議は今春、「風致景観や自然環境の保全と地熱開発を高いレベルで調和させる具体的な戦略の検討、フォローアップを行うことを目的」(同省)に発足。これまで主に、地熱開発事業者サイドから意見を聴取してきた。今回聴取に応じたのは2団体のほか、日本秘湯を守る会、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)、世界自然保護基金ジャパン、日本野鳥の会。
同省からは横光副大臣のほか、自然環境局、地球環境局、水・大気環境局などの担当者が出席した。
温泉協会からは廣川允彦会長、宮崎謹一常務理事らが出席。地熱発電のマイナス面などを指摘した上で、(1)地元(行政や温泉事業者)の合意(2)客観性が担保された相互の情報公開と第三者機関の創設(3)被害を受けた温泉と温泉地の回復作業の明文化──など5つを提案した。また、温泉協会のこうした意見に対し、全旅連や日観連、国観連、福島県温泉協会などが賛同していることを付け加えた。
秘湯を守る会からは佐藤好億代表理事や岡村興太郎副代表らが出席、意見を述べた。地熱発電所の現場では温泉の枯渇や減少、土砂災害、水蒸気爆発など地熱開発が原因として疑われる人災が発生していると指摘。例えば、澄川発電所(秋田県鹿角市)周辺の温泉では大規模な土砂崩落が発生し、澄川、赤川両温泉が壊滅したという。
反対を押し切って地熱開発に着手する際は、(1)温泉源利用や自然公園等保護地域の環境保全に対する行政チェック機能の徹底(2)国民への公正な情報公開の確立──などの対策をとるよう強く求めた。
全旅連は野沢幸司常務理事が意見を述べ、温泉協会の趣旨に賛同し「無秩序な地熱発電開発には反対する」とした。日本野鳥の会は、「特別保護地区、第1種特別地域内での開発は避けるべきだ」との考えを示した。
出席者からは会合が非公開となったことに不満の声が出た。また「地熱開発が前提にあり、『省として反対の意見はちゃんと聞いた』というアリバイ作りに利用された感も否めない」と受け止める向きもあった。