消費税率が引き上げられた今春。春季に関する国内旅行の動向、宿泊施設の営業状況を示す各種の統計や調査結果が発表された。税率アップに伴う駆け込み需要、その反動減と緩和などの動きが各種数値からうかがえる結果となった。
旅行消費額が増加 観光庁統計
観光庁が7月31日に発表した旅行・観光消費動向調査の今年1〜3月期の結果(速報値)で、日本人の国内宿泊旅行(観光、業務、帰省など)の消費額が前年同期比9.8%増の3兆6389億円となった。1〜3月期としては過去5年で最高。2、3月の伸びが顕著で、消費増税前の駆け込み需要が影響したとみられる。
月別に前年データ(確報値)と比較すると、1月は前年同月比0・7%減の1兆1682億円と前年並みだったが、2月は同11.8%増の1兆164億円、3月は同8.4%増の1兆4544億円と顕著な伸びを示した。2、3月の消費額は過去5年で最高だった。
2月は延べ旅行者数が同0.2%減の1902万7千人だったが、旅行単価は同12.0%増の5万3416円と伸びた。3月は旅行単価が同5.8%減の4万3184円だったが、延べ旅行者数が同15.0%増の3367万9千人だった。
同調査は、四半期ごとの動向を年2回、全国から抽出した2万5千人に調査し、旅行回数や消費額などを推計している。
4月の稼働率は低調 旅館協会調査
日本旅館協会がこのほど発表した会員旅館346軒の回答を基にした営業概況調査の春季の結果では、稼働率、宿泊単価ともに、3月は前年同月の実績を上回ったが、4月は下回った。5月には再びプラスになった。
客室稼働率は、3月が前年同月比2.6ポイント増の59.2%と上昇が見られたが、4月が同0.8ポイント減の50.3%とわずかに下降した。5月はプラスに転じ、同1.4ポイント増の58.0%だった。
増税の影響について旅館協会は、一部には「ほとんど影響がない」という施設もあるとしながらも、全体として「増税の前と後で動きが大きい。3月に駆け込み需要、4月に反動、5月からは平常に戻ったところが多い」と指摘した。
総宿泊単価(館内売り上げ含む)は、3月は同2.1%増の1万2498円だったが、4月は同0.7%減の1万2721円。5月は同1.4%増の1万3598円。
単価は上昇傾向 リョケン短観
経営コンサルタントのリョケン(静岡県熱海市)は、全国の旅館・ホテルを対象に実施した短期観測アンケートの結果(94軒回答)で、4〜6月の実績について客数は「横ばい傾向」だが、単価は「上昇傾向」にあると分析した。
客数については、「増加傾向」と回答した割合が30.9%で、前年同期の調査と比較して11.6ポイント減少した。「横ばい傾向」の回答は37.2%を占め、「減少傾向」は31.9%だった。
館内売り上げなどを含む総宿泊単価では、「上昇傾向」が34.0%で、前年同期の調査と比較して13.2ポイント増加した。「横ばい傾向」の回答は50.0%。「下降傾向」は16.0%で前年より7.6ポイント減少した。
全体的な傾向としてリョケンは「消費税増税により一時的に宿泊客が減少したが、5、6月に個人、団体の動きが活発になり、結果的に宿泊客数が増加したとのコメントが多く見受けられた」と指摘した。