日本添乗サービス協会(TCSA、山田隆英会長)はこのほど、全57会員に文書を発信し、派遣先旅行会社へ添乗労働に関するコンプライアンスの徹底を求める行動を起こすよう呼びかけた。徹底事項は、添乗中の深夜労働への法定割増派遣料金の支払い、事前打ち合わせ、事後の精算にかかわる料金の支払いなど。TCSAは、10月末に日本旅行業協会(JATA)が派遣添乗員の待遇改善に前向きな考えを示したため、好機ととらえ、会員総力によって早期決着を実現したい考えだ。
旅行会社に要望する添乗労働のコンプライアンス事項は、(1)添乗中の深夜労働に対する法定割増派遣料金(2)添乗前の打ち合わせ、事後の精算業務の支払い──のほか、(3)添乗中の休憩時間の取得(4)法定休日労働時間に対する付加派遣料金の支払い(5)訪問先国での法令順守──の計5つ。加えて、添乗業務や処遇の早急な改善を望む事項として、(1)添乗、打ち合わせ業務に付随するその他の業務と添乗付加業務への支払い(2)1暦日を超えた添乗業務の取り扱い(3)現金携行リスクの回避(4)宴席、酒席、二次会などでのコンパニオン代行業務強要の禁止──を挙げた。
ここ数年、都内や大阪の労働基準監督署で、派遣添乗員の労働のあり方について派遣会社に是正勧告する動きが相次いでいる。特に、「従来、みなし労働時間制を適用する添乗業務に早朝深夜割増賃金等の概念はなじまないと業界内では言われてきた」(TCSA)なか、例えみなし労働だとしても、労働基準法第34条に定める休憩時間や深夜業、休日に関する第37条の規定は適用すべきとの見解は定まっている。
労働問題の多発を受けてJATAは、奥山隆哉理事・事務局名で10月24日付け速報を会員各社に発出し、「旅行業界の社会的地位の向上を目指す観点からも好ましいことではない」として、派遣添乗員の待遇改善について現状の点検と真摯な検討が必要と示唆した。
JATAの動きに呼応してTCSAは10月29日、理事会に次ぐ意思決定機関である企画運営委員会を緊急開催。今回の全会員会社による統一的な要望行動を決めた。